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匂い受容体たんぱく質が発現した立体組織を用いて、空気中の匂いを感知することに成功 細胞を利用した匂いセンサ開発に新しい手法

掲載日:2014年8月21日

東京大学 生産技術研究所の竹内 昌治教授と同佐藤 幸治特任講師(研究当時)は、動物の匂いセンサである「匂い受容体」を利用して、立体的に構築した細胞塊を気体状の匂い物質のセンサとして機能させることに成功しました。

昆虫匂い受容体を利用した、気相匂い刺激の検出。フォトリソグラフィーで作製した培養チェンバーで、匂い受容体を発現したスフェロイドを作製する。それを水分を保持したハイドロゲルチェンバー内に設置することで、匂い刺激に対するイオンチャネルの反応を、細胞外電位変化としてできる。

© 2014 Koji Sato.
昆虫匂い受容体を利用した、気相匂い刺激の検出。フォトリソグラフィーで作製した培養チェンバーで、匂い受容体を発現したスフェロイドを作製する。それを水分を保持したハイドロゲルチェンバー内に設置することで、匂い刺激に対するイオンチャネルの反応を、細胞外電位変化としてできる。

近年、匂いを通した快、不快などがQOL(生活の質)の指標として注目されています。また、匂いは衛生害虫の繁殖などにも関わっており、匂い物質の測定が社会的側面だけでなく、公衆衛生の面からも求められています。

イヌなど、動物の鼻は非常に優れた化学センサであるため「匂い受容体」を用いた匂いセンサの開発が盛んに行われてきました。しかし、これまで、実際の鼻のように気体状の匂いを検出させることには成功していませんでした。

今回竹内教授らは「匂い受容体」をもったスフェロイドという細胞の微小な固まりを作製し、水分を保持したハイドロゲルで作製した微小容器の中にそれを配置しました。その結果、表面の薄い水の層に溶け込んだ、気体状の匂い物質に対する反応を測定することに世界で初めて成功しました。さらにこの方法を用いて、マラリアを媒介するハマダラカが持っている匂い受容体の反応を測定しました。すると、生体と同じような匂いに対する反応を引き起こすためには、嗅粘膜やリンパ液に含まれる成分が必要であることが示唆されました。

本成果はこれまでほとんど注目されていなかった鼻粘液の役割の重要性を明らかにすると共に、感覚生理学や公衆衛生の分野でも重要な知見を与える技術を提供するものです。

プレスリリース [PDF]

論文情報

Shoji Takeuchi, Koji Sato,
“Chemical vapor detection using a reconstituted insect olfactory receptor complex” ,
Angewandte Chemie International Edition Online Edition: 2014/7/29 (Japan time), doi: 10.1002/anie.201404720.
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生産技術研究所 統合バイオメディカルシステム国際研究センター

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