ARTICLES

English

印刷

ヒトとサルに共通の大脳記憶ネットワークを解明 サルの後部頭頂葉は記憶想起時に活動する

掲載日:2013年3月14日

ヒトを対象とした神経イメージング技術の発達により、記憶の想起に、海馬に代表される内側側頭葉だけでなく、後部頭頂葉の働きが関与することが分かってきました。この記憶想起中に活動する頭頂領域は、ヒトで特によく発達した進化的に新しい領野で実際にどのような役割を担っているのか、この働きが言語を用いるヒトに特有のものなのかよく分かっていませんでした。

再認記憶とは過去に呈示された事象を認識する能力のことを言います。正しく再認できた時にサルの後部頭頂葉の二つの領域(頭頂間溝・下頭頂小葉)で活動の上昇が見られました。© Kentaro Miyamoto

再認記憶とは過去に呈示された事象を認識する能力のことを言います。正しく再認できた時にサルの後部頭頂葉の二つの領域(頭頂間溝・下頭頂小葉)で活動の上昇が見られました。© Kentaro Miyamoto

東京大学大学院医学系研究科 統合生理学教室の宮下保司教授、宮本健太郎大学院生(博士課程)らの研究グループは、マカクザルにヒトと同様の認知記憶課題を課し、磁気共鳴画像装置(MRI)内で課題遂行中の活動(血液酸素化レベル依存信号)を記録してヒトと比較しました。すると、サルにおいても、正しく記憶を想起した時に後部頭頂葉の活動が上昇することが初めて確かめられました。さらに、後部頭頂葉に同定された2つの活動領域は、機能的にも解剖学的にも分化していて,それぞれヒトの頭頂葉の異なる領域に対応していることが示唆されました。電気生理学的、薬理学的手法を組み合わせることによって同定した領域の機能をより詳細に検討することで、記憶想起に関係する後部頭頂葉の役割への理解が深まり、将来的にはヒトへの臨床的な応用も期待されます。

論文情報

Kentaro Miyamoto, Takahiro Osada, Yusuke Adachi, Teppei Matsui, Hiroko M. Kimura, Yasushi Miyashita,
“Functional Differentiation of Memory Retrieval Network in Macaque Posterior Parietal Cortex”,
Neuron 77(4) 2013: 787-799, doi: 10.1016/j.neuron.2012.12.019.
論文へのリンク

リンク

大学院医学系研究科

大学院医学系研究科 機能生物学専攻 生理学講座 統合生理学教室

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる