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スロー地震の巨大地震との関連性

これまでのスロー地震研究から見えてきたこと

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地震研究所
2016/08/23

© 2016 小原一成黒の矢印はスロー地震の破壊伝播における移動方向を、赤の矢印は長期的スロースリップイベント(数カ月から数年もの長期間に渡って断層がゆっくりずれ動く現象)から他のスロー地震に対する誘発作用を、また、赤と黄の星印はそれぞれ深部低周波微動のうち活動域の上端側と下端側の活動を表します。上端側の深部低周波微動活動は隣接する長期的スロースリップイベントの影響を受けやすく、また、長期的スロースリップイベントは、南海トラフ近傍の浅部スロー地震の活動にも影響を及ぼします。

南海トラフ沈み込み帯で発生するスロー地震の多様性や相互作用を示す概念図
黒の矢印はスロー地震の破壊伝播における移動方向を、赤の矢印は長期的スロースリップイベント(数カ月から数年もの長期間に渡って断層がゆっくりずれ動く現象)から他のスロー地震に対する誘発作用を、また、赤と黄の星印はそれぞれ深部低周波微動のうち活動域の上端側と下端側の活動を表します。上端側の深部低周波微動活動は隣接する長期的スロースリップイベントの影響を受けやすく、また、長期的スロースリップイベントは、南海トラフ近傍の浅部スロー地震の活動にも影響を及ぼします。
© 2016 小原一成

東京大学地震研究所の小原一成教授と加藤愛太郎准教授は、近年発見されてきた、通常の地震よりも断層がゆっくり動くスロー地震(ゆっくり地震)という現象の特徴から、スロー地震とプレート境界に発生する巨大地震との関連について3つの可能性を指摘しました。スロー地震の継続的な観測は、巨大地震の発生予測に新たな視点を提供するものと期待されます。

スロー地震は、断層破壊がゆっくりと進行する地震現象であり、強い揺れを伴いません。しかし、スロー地震の多くは沈み込むプレート境界面上で巨大地震発生域に隣接し、しかも巨大地震と同じタイプの断層運動によって地震が生じることから、スロー地震と巨大地震との関連性が示唆され、世界中でスロー地震研究が盛んに行われてきました。

今回、小原教授と加藤准教授は、発見されてから20年にも満たないこれらのスロー地震の観測研究に基づき、スロー地震が巨大地震に対して以下の3つの役割を担う可能性を有することを示しました。

一つ目は、巨大地震の類似現象(Analog)としての役割です。つまり、スロー地震の活動様式が巨大地震とよく似ており、さらにスロー地震は非常に高い頻度で発生することから、巨大地震の発生様式を理解するためのヒントを与える可能性があります。二つ目は、巨大地震の発生領域にかかる力の状態を反映する指標(Stress meter)としての役割です。スロー地震はその周囲に働く力の変化に敏感であるため、巨大地震の震源域において蓄積していく力の状況に応じて、隣接するスロー地震の活動パターンが変化する可能性があります。三つ目は、スロー地震が力を加えることで(Stress transfer)、巨大地震を引き起こすという役割です。スロー地震の発生によってその周囲に力を配分することがあるため、隣接した巨大地震の震源域における断層の破壊を促進する可能性があります。

スロー地震に関するこれまでの観測研究結果を、巨大地震との関連性という観点で整理し直した本研究を指針として、今後もスロー地震の活動を継続的に観測し、その活動様式や発生原因の解明を進めることにより、巨大地震の発生過程に関する理解の進展にも繋がることが期待されます。

「私がスロー地震の一つである深部低周波微動を2002年に世界で初めて発見したときは、この現象が巨大地震と関わりがあるのではという、漠然とした恐怖心を抱きました」と小原教授は話します。「しかし、スロー地震の研究が進むにつれて、巨大地震との関連についてもいくつかの可能性が明らかになり、今後取り組むべきスロー地震研究の方向性が見えてきたような気がします」と続けます。

論文情報

Kazushige Obara, Aitaro Kato, "Connecting slow earthquakes to huge earthquakes", Science Online Edition: 2016/07/15 (Japan time), doi:10.1126/science.aaf1512.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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