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シナプスの演算ルールを可視化することに成功! ナノレベルの記憶形成機構解明

掲載日:2013年5月13日

東京大学 大学院医学系研究科脳神経医学専攻 神経生化学分野の尾藤 晴彦教授と藤井哉特任助教らは、シナプス可塑性が起こる過程を顕微鏡で観察し、シナプス酵素が行う情報処理を明らかにしました。

© The Authors. シナプス可塑性と記憶学習の際に活性化されるシナプス酵素であるCaMKIIalphaとカルシニューリンのdFOMAイメージング:神経情報伝達を規定する新たな非線形的情報処理過程の解読

これまで、外界の情報は神経入力となってシナプスの様々な酵素を活性化して可塑性を引き起こし、記憶につながると考えられていました。しかし、シナプスの酵素がどのように神経入力を読み解くのか、またこれをシナプスがどのような演算ルールとして活用するのかは全く分かっていませんでした。それは従来の方法では1フェムトリッター以下の容量のシナプスを分離して生化学的な分析することができないためでした。

本研究グループは、複数の酵素の活性化を直接顕微鏡で動画として記録する方法(dFOMA法)を開発しました。この方法を用いて、シナプスの酵素が神経入力の情報を読み解く様子を、世界で初めてリアルタイムで観察することに成功しました。また、これまで単に遺伝子の実態として捉えられてきた酵素について、実はそれぞれ固有の情報処理を行う素子であるという新しい機能を明らかにしました。

今回の結果は、記憶の分子メカニズムという複雑なシステムを理解する上で重要な知見であり、将来的にはアルツハイマー病など高次脳機能障害の解明に役立つことが期待されます。また、今回開発したdFOMA法は広く生物学一般への応用が可能であり、様々な生命現象の原理を、まるで動画を見るように理解することができるようになることが期待されます。

プレスリリース [PDF]

論文情報

Fujii H, Inoue M, Okuno H, Sano Y, Takemoto-Kimura S, Kitamura K, Kano M, Bito H,
“Nonlinear Decoding and Asymmetric Representation of Neuronal Input Information by CaMKIIα and Calcineurin”,
Cell Reports Online Edition: 2013/4/19 (Japan time), doi: 10.1016/j.celrep.2013.03.033.
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大学院医学系研究科 神経生化学分野

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