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可視光を利用して巨大な電圧を発生する強誘電体デバイスを開発 1000ボルトを超える巨大電圧の発生に向けて

掲載日:2015年10月20日

© 2015 野口 祐二分極界面がない場合(a)では、マイナス5ボルトが観測されたのに対し、分極界面の導入(b)によって、プラス23ボルトの高電圧が得られました。強誘電体の自発分極(c)が創る分極界面(d)が、結晶内部の8000倍もの光電変換機能をもつことを明らかにしました。

可視光下で巨大電圧を発生する強誘電体の分極界面
分極界面がない場合(a)では、マイナス5ボルトが観測されたのに対し、分極界面の導入(b)によって、プラス23ボルトの高電圧が得られました。強誘電体の自発分極(c)が創る分極界面(d)が、結晶内部の8000倍もの光電変換機能をもつことを明らかにしました。
© 2015 野口 祐二

東京大学大学院工学系研究科の野口祐二准教授、井上亮太郎特任研究員(研究当時)、宮山勝教授らの研究グループは、可視光を利用して23ボルトの高電圧を発生するデバイスを開発することに成功しました。本成果は太陽光をエネルギー源とするクリーンなエネルギーの創出に貢献することが期待されます。

半導体を用いて光を電気に変換する光電変換デバイスは、太陽電池として利用されています。しかし、現状の半導体デバイスで発生できる電圧は、最高で数ボルト程度にとどまっています。近年、強誘電体薄膜において、高電圧の発生が可能であることが報告され、強誘電体を用いた光電変換デバイスの研究開発が活発に行われてきました。しかし、その発電原理は未解明で、デバイスの設計指針も不明であるなど、様々な課題を抱えていました。

今回研究グループは、強誘電体であるチタン酸バリウムの単結晶を用いた実証実験を行い、ドメインの境界である厚さ数ナノメートルの分極界面が、可視光を高電圧に変換する機能を持つことを証明しました。加えて、この分極界面の構造を制御することにより、原理的には1000ボルトを超える巨大な電圧が得られる可能性があることを明らかにしました。

「本成果は、酸化亜鉛や窒化ガリウムなど、他の分極性材料へも応用できる可能性があります」と野口准教授は話します。「従来の半導体太陽電池と融合することができれば、現在の発電効率の向上も見込めると考えています」と続けます。

今後、太陽光を利用して高電圧を発生する光電変換デバイス研究の推進に拍車がかかることが期待されます。

論文情報

Ryotaro Inoue, Shotaro Ishikawa, Ryota Imura, Yuuki Kitanaka, Takeshi Oguchi, Yuji Noguchi, and Masaru Miyayama, "Giant photovoltaic effect of ferroelectric domain walls in perovskite single crystals", Scientific Reports Online Edition: 2015/10/07 (Japan time), doi:10.1038/srep14741.
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