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光パルス照射で磁気の波の発生と伝播制御に成功  

掲載日:2012年9月21日

スピン波の発生とその伝播方向の制御方法 © Takuya Satoh
開口を通ったポンプ光がレン ズによってガーネット試料に集光される。時間遅延をつけたプローブ光がスピン波を検出する。スポット形状が楕円の場合、楕円の長軸に垂直方向にスピン波が伝播する。

東京大学生産技術研究所の佐藤琢哉助教、黒田和男教授(当時、現在は宇都宮大学特任教授、東京大学名誉教授)、志村努教授らの研究グループは、東北大学原子分子材料科学高等研究機構の齊藤英治教授ら、ウクライナ科学アカデミーのボリス・イワノフ室長と共同で、磁石に光パルスを照射するだけで磁気の波(スピン波)を発生させ、さらに光のスポット形状を変えることで波の伝播方向を制御することに成功しました。

電子のスピン自由度を利用する新しい技術“スピントロニクス”において、スピン波は情報を伝達する媒体としての役割が期待されています。また、そのスピン波を用いたスイッチング素子を実現する上で、スピン波の伝播方向を制御する技術が望まれています。

本研究では磁性体に円偏光パルスを照射することで瞬間的にスピン波を発生させ、それを時間・空間分解して観測することに成功しました。さらに発生したスピン波の源は、照射する光パルスのスポット形状に依存し、それを利用してスピン波の伝播方向が制御できることを理論的・実験的に実証しました。

光パルスのスポット形状がスピン波の源を決定するというこの発見は、計算機ホログラムによる種々の形状の光スポットで自在にスピン波を時空間制御する技術につながり、スピントロニクスにおける光-磁気スイッチング素子への展望が拓かれます。

本研究成果は、英国の科学雑誌「Nature Photonics」10月号(9月9日オンライン版発行)に掲載されます。

本研究成果の主たる部分は独立行政法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)「光の利用と物質材料・生命機能」研究領域(研究総括:増原 宏 奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科 特任教授/台湾国立交通大学 講座教授)における研究課題「フェムト秒光波制御による超高速コヒーレントスピン操作」(研究者:佐藤琢哉)の一環でなされました。また一部は、科学研究費補助金の助成によります。

プレスリリース (JST)

論文情報

Takuya Satoh, Yuki Terui, Rai Moriya, Boris A. Ivanov, Kazuya Ando, Eiji Saitoh, Tsutomu Shimura ,Kazuo Kuroda,
“Directional control of spin wave emission by spatially shaped light”,
Nature Photonics 10月号, doi: 10.1038/NPHOTON.2012.218.
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