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Research News

新しい種類の超伝導の発生源になりうるか?

鉄系超伝導体に見つかった磁性を示さない電子の状態とその特異点

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新領域創成科学研究科
2016/07/14

© 2016 細井 優図中の四角印◆は電子が液晶のように振る舞い始める温度、丸印●が超伝導を示す温度を表す。セレン化鉄のセレンの一部を硫黄原子に置換していくと液晶状態になる温度は低くなり、およそ17パーセント置換すると完全に消える。図中のカラーグラデーションは電子が液晶になろうとする強さの指標(χnem)に対応しており、液晶状態が消えるあたりで特異的に増大する振る舞いが見られる。この振る舞いは図中の矢印で示されるように非磁性の電子液晶状態における特異点が存在することを示唆している。

鉄系超伝導体における電子液晶状態とその特異点
図中の四角印◆は電子が液晶のように振る舞い始める温度、丸印●が超伝導を示す温度を表す。セレン化鉄のセレンの一部を硫黄原子に置換していくと液晶状態になる温度は低くなり、およそ17パーセント置換すると完全に消える。図中のカラーグラデーションは電子が液晶になろうとする強さの指標(χnem)に対応しており、液晶状態が消えるあたりで特異的に増大する振る舞いが見られる。この振る舞いは図中の矢印で示されるように非磁性の電子液晶状態における特異点が存在することを示唆している。
© 2016 細井 優

東京大学大学院新領域創成科学研究科の細井優大学院生、芝内孝禎教授らの研究グループは、鉄系超伝導体の一種において、この超伝導体を構成する元素を置き換え、その置換量を系統的に変化させた結果、ある組成を境に電子状態が大きく変わる臨界点(特異点)を発見しました。本特異点は、従来のものとは全く異なる新しい種類のものであり、超伝導が新しい機構によって生じている可能性があります。

特異点の研究は、例えば宇宙の起源を解明するために一種の特異点であるブラックホールを調べるように、さまざまな物理現象の仕組みを解き明かすための有力な手法です。熱のエネルギーを失うことなく電気を通すことのできる超伝導現象を扱った超伝導体の研究においては、このような特異点の近くで生じる特殊な電子状態が、新しい超伝導発現の起源となりうることが理論的に示唆されています。特に、これまで鉄系超伝導体において発見された特異点はいずれも磁気的な性質を伴ったものであり、磁気的な性質を伴わない新しい種類の特異点が存在しうるか否かは不明でした。

研究グループは鉄系超伝導体の中でも磁性が現れないという特色をもつセレン化鉄という物質に着目し、電子が液晶のような性質を示すことを手掛かりにして、一部のセレン原子をより原子半径の小さい硫黄原子に置き換えて(FeSe1-xSx)その影響を調べました。その結果、セレン原子のおよそ17パーセントを硫黄原子によって置き換えると、磁気的な性質を伴わない新しい特異点の存在を発見することに成功しました。

今後、この新しい特異点と超伝導の関係を明らかにすることによって、新しい超伝導発現機構が実現しうることが立証されれば、より高い温度における超伝導の実現へ新たな道筋を与えることが期待されます。

「単純な金属で現れる従来の超伝導では、格子振動が重要な寄与を果たしていることはわかっていますが、通常あまり高い温度では超伝導になりません。より高い温度で超伝導を生じさせるためには、これまでとは異なった機構で実証できるかどうかが重要です」と芝内教授は話します。「新しい特異点が見つかったことは、液晶のような状態が超伝導の新しい発生源である可能性があるので、今までとは異なるタイプの超伝導の実現に夢が膨らみます」と期待を寄せています。

なお、本成果は京都大学大学院理学研究科の笠原成助教授と松田祐司教授との共同研究によって得られたものです。

プレスリリース

論文情報

S. Hosoi, K. Matsuura, K. Ishida, Hao Wang, Y. Mizukami, T. Watashige, S. Kasahara, Y. Matsuda, T. Shibauchi, "Nematic quantum critical point without magnetism in FeSe1-xSx superconductors", Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America Online Edition: 2016/07/05 (Japan time), doi:10.1073/pnas.1605806113.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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