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がん発生の基盤となる仕組みを探る DNA損傷下における細胞周期の新たな制御因子

掲載日:2014年11月13日

がんとは、細胞周期を制御する仕組みが働かなくなることで、本来起こるべきではない細胞分裂が繰り返されている状態であり、私たちの染色体に記録された遺伝情報に異常が蓄積することによって引き起こされます。細胞周期を制御する仕組みを支えているのは、細胞内のがん抑制遺伝子群であり、実際に多くのがんでそれらの遺伝子の機能に異常が発見されています。私たちの体内で頻繁に起こっているDNA損傷がそのような異常の蓄積の引き金となることは判明していますが、その後どのような過程を経てがんが発生するのか、その大部分は明らかになっていません。

DNA損傷下における細胞周期の制御。DNAが損傷した状況では本来、細胞周期を停止させる仕組みが存在するが、今回新たに発見された遺伝子Rad54Bはその仕組みを無効にして細胞周期を進行させることで、遺伝情報の異常を伴った細胞の生存を促進する。このような細胞の生存は、がんの発生や、がんのさらなる進展、悪性化につながると考えられる。

© 2014 安原 崇哲
DNA損傷下における細胞周期の制御。DNAが損傷した状況では本来、細胞周期を停止させる仕組みが存在するが、今回新たに発見された遺伝子Rad54Bはその仕組みを無効にして細胞周期を進行させることで、遺伝情報の異常を伴った細胞の生存を促進する。このような細胞の生存は、がんの発生や、がんのさらなる進展、悪性化につながると考えられる。

今回、東京大学大学院医学系研究科の安原崇哲大学院生と宮川清教授らの研究グループは、DNA損傷後の細胞の生死を決定する仕組みが、がんの発生過程に与える影響の大きさに注目し、その仕組みを制御する新たな遺伝子Rad54Bを発見しました。Rad54BがDNA損傷下で過剰に働いた場合には、本来停止させるべき細胞周期が進行し、遺伝情報に異常をもった細胞の生存を促進することがわかりました。このような細胞の生存は、がん発生過程の第一歩となりうることから、Rad54Bはがん発生の基盤となる仕組みを制御する因子であることが示唆されます。将来的にはRad54Bタンパク質を標的としたがん治療によって、がんの進展を抑えるのみならず、がんの発生を未然に防ぐことが可能になると期待されます。

プレスリリース

論文情報

Takaaki Yasuhara, Takahiko Suzuki, Mari Katsura and Kiyoshi Miyagawa,
“Rad54B serves as a scaffold in the DNA damage response that limits checkpoint strength”,
Nature Communications Online Edition: 2014/11/11 (Japan time), doi: 10.1038/ncomms6426.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター 放射線分子医学部門

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