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発癌を阻止する新たな分子の発見 大腸癌を予防する物質の発見

掲載日:2014年6月9日

大腸癌は日本人が最も多く発症する癌の1つである。大腸癌のリスクは、炎症性の消化器疾患や、生活習慣に由来する慢性的な腸の炎症によって大きく上がる。慢性的な腸の炎症から大腸癌の発症へとつながるメカニズムは、炎症に反応して組織に浸潤してくる免疫細胞が各種の生理活性物質を産生し、これらの物質が炎症部位の細胞の異常な増殖(がん化)を刺激するためと考えられている。つまり、炎症のもととなる疾患の治療や炎症の慢性化を防止すれば、大腸癌の発症を抑えられる可能性が高い。

© 2014 村田幸久 (東京大学大学院農学生命科学研究科)
マスト細胞がPGD2を産生して炎症と発癌を抑える。

東京大学大学院農学生命科学研究科の村田幸久 准教授の研究グループは、マウスにおいて炎症がおこった時に大腸組織に浸潤してくる免疫細胞の一種(マスト細胞)が、プロスタグランジンD2 (PGD2)という生理活性物質を産生し、このPGD2が腸炎の重症化やそれに続く大腸癌の発症を強く押さえる作用を持つことを発見した。さらに、薬の投与によってPGD2のはたらきを刺激し活性化することで、大腸炎の症状が改善され、大腸癌の発症を抑えることに成功した。

本成果は新しい腸炎に対する治療薬や大腸癌の予防薬の開発につながる可能性が期待される。

プレスリリース

論文情報

Koichi Iwanaga, Tatsuro Nakamura, Shingo Maeda, Kosuke Aritake, Masatoshi Hori, Yoshihiro Urade, Hiroshi Ozaki, Takahisa Murata,
“Mast cell-derived prostaglandin D2 inhibits colitis and colitis-associated colon cancer in mice”,
Cancer Research Online Edition: 2014/5/30, doi: 10.1158/0008-5472.CAN-13-2792.
論文へのリンク

リンク

大学院農学生命科学研究科

大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻

大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻 放射線動物科学研究室

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