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電場で制御可能なナノスケールのスピン渦(スキルミオン)を発見 超低消費電力な次世代の演算・磁気メモリ素子に道

掲載日:2012年4月19日

最先端研究開発支援プログラム(FIRST)課題名「強相関量子科学」 (中心研究者;十倉好紀)の事業の一環として、東京大学大学院工学系研究科の関真一郎特任助教・石渡 晋太郎特任准教授・十倉 好紀教授と理化学研究所基幹研究所の于 秀珍特別研究員の研究グループは、ナノスケールのスピン渦(スキルミオン)が電場で制御可能であることを発見し、超低消費電力な演算・磁気メモリ素子の実現に向けた新しい道筋を示しました。

電子は電荷とスピンという2つの自由度を持っていますが、従来の半導体エレクトロニクスは電荷の自由度のみを利用しており、より画期的な性能を求めてスピンの自由度を積極的に活用する試みが盛んに行われています。最近になり、一部の特殊な金属の中で、電子のスピンが自発的に「スキルミオン」と呼ばれる渦巻き状の構造をつくることが発見されました。スキルミオンはナノスケールの粒子としての性質を持つため、次世代の演算・記憶素子における新しい情報担体として期待されていますが、現象の舞台となる新物質の発見や、その制御手法の確立が大きな課題となっていました。

今回、右手と左手のように、鏡写しにした像を互いに重ねることができないキラルな結晶構造を持つ絶縁体Cu2OSeO3(Cu : 銅、O:酸素、Se:セレン)のスピン構造をローレンツ電子顕微鏡で直接観察した結果、世界で初めて絶縁体中でスキルミオンを観測することに成功しました。さらに電気的な測定を通じて、スキルミオンが電気分極(正負の電荷の組の整列状態)を引き起こしていることを発見し、電場でスキルミオンの位置を自在に制御することが原理的に可能であることを明らかにしました。絶縁体中の電場には、発熱によるエネルギー損失を生じないという利点があります。今回の発見は、エレクトロニクスの根幹である電子の制御手法に、よりエネルギー効率の高い新しい選択肢を加えるものであり、次世代の超低消費電力演算素子・磁気メモリ素子の開発につながることが期待されます。

本研究成果は、平成24年4月13日午前3時(米国時間4月12日午後2時)に米国科学雑誌「Science」オンライン版で公開されています。

プレスリリース

論文情報

S. Seki, X. Z. Yu, S. Ishiwata, Y. Tokura,
“Observation of Skyrmions in a Multiferroic Material”,
Science Vol. 336 no. 6078 pp. 198-201, doi: 10.1126/science.1214143.
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大学院工学系研究科

工学部物理工学科・大学院工学系研究科物理工学専攻

大学院工学系研究科附属 工学部量子相エレクトロニクス研究センター

最先端研究開発支援プログラム「強相関量子科学」

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