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ビタミンB12などに含まれるイミダゾールが強誘電性や反強誘電性を持つことを発見 次世代強誘電体材料として重要な一歩

掲載日:2013年1月30日

JST 課題達成型基礎研究の一環として、産業技術総合研究所 フレキシブルエレクトロニクス研究センターの堀内 佐智雄 研究チーム長、東京大学 大学院工学系研究科 賀川 史敬 講師らは、生体物質であるイミダゾール系化合物が、電子材料として期待される強誘電性)や反強誘電性といった分極反転機能を持つことを発見しました。

メチルベンゾイミダソールにおける強誘電ドメインの実空間観測 cFumitaka Kagawa

強誘電体は絶縁体の一種で、物質内部でプラスとマイナスの電荷に偏り(分極)が生じます。また、電圧の向きに応じて分極が反転する性質を持つため、電子機能や光機能を持った重要な電子材料として注目されています。現在、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)類などの無機のセラミックスが主に使われていますが、毒性の高い鉛を高濃度で含むため、早期の代替が求められています。一方、有害元素やレアメタルを一切含まず、軽量で形状自由度を持ち、印刷プロセスなどに適応できる有機物は、低環境負荷、省エネルギーの革新的機能材料の候補として期待されています。

本研究グループは、これまでに有機強誘電体として炭素、水素、酸素のみで構成されたクロコン酸分子により、無機材料に迫る特性を見いだしました。しかし、化学的安定性や有機溶剤への適応性に課題があったことから、今回はその動作原理を生かしつつ、さまざまな有機物について電気分極や誘電特性、温度特性などを詳細に調べました。その結果、数多くのイミダゾール結晶が、強誘電性などの分極反転機能を室温で示すことを発見しました。さらに、分子にさまざまな化学修飾をすることで変化に富んだ分子の集合形態が実現でき、分極の向きをそろえることにも成功しました。

イミダゾールは、ヒスタミンやビタミンB12などの生体物質としても知られた有機分子であり、化学的に安定で溶解性も優れ、多くが市販品もしくは確立された合成法で入手できます。今回、遍在する物質群で多彩かつ高性能な強誘電性機能を発揮できたことは、次世代強誘電体材料として今後の機能展開の重要な一歩と考えます。

本研究は、東京大学/理化学研究所の十倉 好紀 教授、高エネルギー加速器研究機構の熊井 玲児 教授らと共同で行われ、本研究成果は、2012年12月18日(英国時間)にオンライン科学誌「Nature Communications」のオンライン速報版で公開されました。

プレスリリース(JSTウェブサイト)

論文情報

Sachio Horiuchi, Fumitaka Kagawa, Kensuke Hatahara, Kensuke Kobayashi, Reiji Kumai, Youichi Murakami and Yoshinori Tokura,
“Above-room-temperature ferroelectricity and antiferroelectricity in benzimidazoles”,
Nature Communications 3 Online Edition: 2012/12/18, doi: 10.1038/ncomms2322.
論文へのリンク

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大学院工学系研究科

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