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水様性下痢の原因となる原虫の感染を抑える物質の発見 クリプトスポリジウム原虫の感染機構の解明と薬剤開発の端緒

掲載日:2015年7月2日

© 2015 Kentaro Kato.(上図)人獣共通の感染病原体であるクリプトスポリジウム原虫の感染環
(下図)ヘパリンのクリプトスポリジウム原虫に対する感染阻害効果は、ヘパリンの濃度が高くなるほど高くなる(濃度依存的)

クリプトスポリジウム原虫の感染環とヘパリンによる感染阻害
(上図)人獣共通の感染病原体であるクリプトスポリジウム原虫の感染環
(下図)ヘパリンのクリプトスポリジウム原虫に対する感染阻害効果は、ヘパリンの濃度が高くなるほど高くなる(濃度依存的)

© 2015 Kentaro Kato.

東京大学大学院農学生命科学研究科および帯広畜産大学原虫病研究センターの加藤健太郎らの研究グループは、ヘパリンという硫酸化多糖の一種が、哺乳類などに感染して水様性下痢を引き起こすクリプトスポリジウム原虫の感染を抑制することを発見しました。本成果は、クリプトスポリジウム原虫に対する薬剤開発の端緒となることが期待されます。

クリプトスポリジウム原虫は広範な哺乳動物に感染し、特にヒトや牛に激しい水様性下痢を引き起こす人獣共通の感染症の原因となる病原体です。塩素消毒へ強い耐性を有することから、水道水を介したヒトでの集団感染のおそれがあります。また、仔牛にも重篤な下痢症を引き起こすことから、畜産分野においても対策が必要な病原体であり、その感染機構の解明や治療薬開発が求められています。

今回、研究グループはヘパリンなどの硫酸化多糖とクリプトスポリジウム原虫をヒトの大腸由来の細胞に加えて、硫酸化多糖にクリプトスポリジウム原虫の感染を阻害する効果があるか否か検討しました。その結果、ヘパリンが最も高い阻害効果を持ち、ヘパリンの濃度が高ければ高いほど、その阻害効果も高いことを見出しました。さらにクリプトスポリジウム原虫の感染機構を調べたところ、哺乳類の細胞表面の硫酸化多糖であるヘパラン硫酸がクリプトスポリジウム原虫の感染に関与していることを明らかにしました。

「今後、ヘパラン硫酸とクリプトスポリジウム原虫との相互作用をさらに解明することで、クリプトスポリジウム原虫の感染の機構の解明と新規薬剤の開発につながると期待されます」と加藤准教授は話します。

プレスリリース

論文情報

Atsuko Inomata, Fumi Murakoshi, Akiko Ishiwa, Ryo Takano, Hitoshi Takemae, Tatsuki Sugi, Frances Cagayat Recuenco, Taisuke Horimoto, and Kentaro Kato, "Heparin interacts with elongation factor 1α of Cryptosporidium parvum and inhibits invasion", Scientific Reports Online Edition: 2015/7/1 (Japan time), doi:10.1038/srep11599.
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大学院農学生命科学研究科

大学院農学生命科学研究科 獣医学専攻

大学院農学生命科学研究科 獣医学専攻 獣医微生物学研究室

帯広畜産大学 原虫病研究センター 地球規模感染症学分野 加藤健太郎研究室

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