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自然免疫系によるがん細胞の認識・排除の新しい仕組み 自然免疫受容体による認識と排除機構

掲載日:2014年9月8日

未だ根本的治療法のないがんに対する新たな治療法として、最近、免疫療法が本格的に臨床応用され、高い効果がみられることが明らかとなったことから、がんに対する免疫療法には大きな期待が寄せられています。古くから体内の免疫系ががん細胞を認識し排除することが分かっていましたが、その機構としては、獲得免疫系によるがん細胞の認識機構がよく知られており、免疫系のもう一つの軸である自然免疫系がどのようにしてがん細胞を認識し、その排除を促しているのか、という点については不明な点が多く残されていました。

自然免疫受容体Dectin-1が、がん細胞の細胞膜表面に発現するN型糖鎖構造を認識し、転写因子IRF5を介して、がん細胞を殺傷するナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化する。

© 2014 Tadatsugu Taniguchi.
自然免疫受容体Dectin-1が、がん細胞の細胞膜表面に発現するN型糖鎖構造を認識し、転写因子IRF5を介して、がん細胞を殺傷するナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化する。

今回、東京大学生産技術研究所の谷口維紹特任教授(マックスプランク-東京大学統合炎症学センター長)のグループは、東京大学大学院医学系研究科博士課程の千葉志穂大学院生、東京大学生産技術研究所の生島弘彬特任助教、同医学系研究科博士課程の植木紘史大学院生らが中心となり、免疫細胞の一種であるマクロファージや樹状細胞に発現する自然免疫受容体の一つであるDectin-1ががん細胞を直接認識することで、自然免疫系が活性化され、その結果がん細胞が体内から排除されることを明らかにしました。

本研究成果は、自然免疫受容体ががん細胞を認識し、その排除を促していることを世界に先駆けて明らかにするものであり、今後、自然免疫系の活性化を通した、新しいがんの治療法や予防法の開発へとつながると期待されます。

なお、本研究は東京理科大学の岩倉洋一郎教授と千葉大学の西城忍特任准教授との共同研究として行なわれました。

論文情報

Shiho Chiba, Hiroaki Ikushima, Hiroshi Ueki, Hideyuki Yanai, Yoshitaka Kimura, Sho Hangai, Junko Nishio, Hideo Negishi, Tomohiko Tamura, Shinobu Saijo, Yoichiro Iwakura, Tadatsugu Taniguchi,
“ecognition of tumor cells by Dectin-1 orchestrates innate immune cells for anti-tumor responses”,
eLife Online Edition: 2014/8/22 (Japan time), doi: 10.7554/eLife.04177.
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生産技術研究所 炎症・免疫制御学社会連携研究部門

マックスプランク・東京大学統合炎症学センター

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