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"悪い"効果が太陽光発電に役に立つ

高効率な太陽電池の材料を探す新しい指針

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工学系研究科・工学部
2016/01/20

© 2016 Yasuhiro Yamada, Youhei Yamaji, and Masatoshi Imada.デコヒーレンスを伴う少量のエネルギー散逸は、励起子を発光する状態から発光しない“暗い”状態への不可逆的な変化を引き起こします。この現象によって、半導体のカーボンナノチューブの場合、励起子の寿命は50倍近く伸びることがわかりました。

エネルギー散逸とデコヒーレンスを利用した高効率太陽光発電の模式図
デコヒーレンスを伴う少量のエネルギー散逸は、励起子を発光する状態から発光しない“暗い”状態への不可逆的な変化を引き起こします。この現象によって、半導体のカーボンナノチューブの場合、励起子の寿命は50倍近く伸びることがわかりました。
© 2016 Yasuhiro Yamada, Youhei Yamaji, and Masatoshi Imada.

東京大学大学院工学系研究科の山田 康博特任研究員(現大阪大学理学研究科物理学専攻)、今田正俊教授、同附属量子相エレクトロニクス研究センターの山地洋平特任講師らの研究グループは、太陽光発電に悪い影響を及ぼすと考えられていたエネルギー散逸やデコヒーレンスが、実は効率改善に役に立つという直観に反する原理を、数値シミュレーションを用いて実証しました。この結果は高効率な太陽電池の材料を探す新たな指針に貢献するものと期待されます。

太陽電池は太陽光を電気エネルギーに変換します。太陽電池は光子(光の量子)を電子の伝導エネルギーへ変換する装置とも言えます。この変換では、電子と正孔(電子の抜けた穴)の絡みあった励起子が中間状態として重要な役割を果たします。太陽電池が光を吸収すると同時に生成された励起子が、電子と正孔に電荷分離し異なる電極に移動することで電流が流れます。このプロセスでは一見、光子の吸収率が高ければ高いほど励起子の生成を促し、電子のエネルギーに変換する効率が高くなるように見えます。しかし高い吸収率は、その逆の過程、すなわち励起子が光子へ戻る過程も増大させ励起子寿命を縮めるため、後に励起子が電子と正孔に分離する確率を減少させる、という二律背反する状況が生じます。

山田特任研究員らの研究グループは、植物の光合成の過程からヒントを得て、今まで効率を下げる要因だと考えられていたエネルギー散逸とデコヒーレンスが、励起子が光子に戻る過程の抑制に利用でき、効率を上げる上で有用であることを、半導体カーボンナノチューブを例にして、理論的に示しました。エネルギー散逸とデコヒーレンスは、生成後の励起子を発光しない”暗い”状態に不可逆的に変化させ、励起子の寿命を長くするためです。

このような“暗い状態”が有効に働く物質では励起子が光に戻る過程が抑えられるので、弱い発光しか返ってきません。この結果、“暗い”物質は、内部欠陥によりエネルギーを完全に失っていると解釈され、これまで太陽電池の候補物質から外れていました。しかし、実際にはそうではなく、エネルギーが物質の“暗い”状態に蓄えられている可能性があります。

今回の成果によって明らかになった”悪い”効果の良い側面は、今まで太陽電池の材料として見過ごされ、探索されてこなかった物質に光をあて、より効率の良い太陽光エネルギーの利用につながると期待されます。

プレスリリース

論文情報

Yasuhiro Yamada, Youhei Yamaji, and Masatoshi Imada, "Exciton Lifetime Paradoxically Enhanced by Dissipation and Decoherence: Toward Efficient Energy Conversion of a Solar Cell", Physical Review Letters Online Ediition: 2015/11/6 (Japan time), doi:10.1103/PhysRevLett.115.197701.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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