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ペントラキシン3の敗血症への効果を発見 細胞外に流出したヒストンによる血管傷害を抑制

掲載日:2014年9月25日

重症敗血症では全身で炎症反応が起こり、複数の臓器の機能不全により死に至ることが知られています。臓器不全の原因として、通常は細胞内の核にあるヒストンが壊れた組織や炎症細胞から細胞外へ放出されること(細胞外ヒストン)による傷害作用が重要であると考えられるようになってきました。しかし、その実態には不明な点が残されています。

細胞外ヒストンの血管傷害活性とペントラキシン3(PTX3)の保護作用。重症感染症では好中球から病原体に向けて放出されるNETs(Neutrophil extracellular traps)あるいは、傷害された細胞から漏出したヒストンが細胞外ヒストンとして血中に増え、血管内皮細胞を傷害し、臓器不全に至る。ペントラキシン3は、ヒストンを凝集させて内皮細胞を保護する作用がある。

© 2014 浜窪 隆雄
細胞外ヒストンの血管傷害活性とペントラキシン3(PTX3)の保護作用
重症感染症では好中球から病原体に向けて放出されるNETs(Neutrophil extracellular traps)あるいは、傷害された細胞から漏出したヒストンが細胞外ヒストンとして血中に増え、血管内皮細胞を傷害し、臓器不全に至る。ペントラキシン3は、ヒストンを凝集させて内皮細胞を保護する作用がある。

今回、東京大学先端科学技術研究センターの浜窪隆雄教授と太期健二特任助教を中心とする研究グループは同大学大学院工学系研究科の津本浩平教授らと共同で、炎症の急性期に血中に増加するタンパク質であるペントラキシン3(PTX3)の働きを調べ、PTX3がヒストンと凝集反応を起こすことを突き止めました。さらに、敗血症を発症しているモデルマウスや培養された血管内皮細胞を用いて、PTX3が細胞外ヒストンによる血管内皮細胞の傷害作用を抑制し、生存率を画期的に改善することを示しました。

本成果はPTX3の自然免疫における新規の役割の発見であるとともに、重症敗血症やその他の原因で細胞外ヒストンによりもたらされる臓器不全に対して新たな治療法を提供するものとして期待されます。

プレスリリース

論文情報

Kenji Daigo, Makoto Nakakido, Riuko Ohashi, Rie Fukuda, Koichi Matsubara, Takashi Minami, Naotaka Yamaguchi, Kenji Inoue, Shuying Jiang, Makoto Naito, Kouhei Tsumoto, Takao Hamakubo,
“Protective effect of the long pentraxin PTX3 against histone-mediated endothelial cell cytotoxicity in sepsis”,
Science Signaling Online Edition: 2014/9/16 (Japan time), doi: 10.1126/scisignal.2005522.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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