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Research News

植物が敵と仲間を区別する仕組み

RNAがもつ「尻尾」は生体防御機構による分解から免れる目印になる

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分子細胞生物学研究所
新領域創成科学研究科
2017/03/31

© 2017 Kyungmin Baeg、岩川弘宙、泊幸秀正常なメッセンジャーRNA(トカゲ)は3´末端のポリA鎖(尻尾)がRDR6(ブラシ)から逃れる目印になることでPTGS機構による分解から免れるが(上)、3´末端にポリA鎖を欠いた異常なメッセンジャーRNAはRDR6によって二本鎖化されPTGS機構によって分解される(右)。

植物が「正常」なRNAと転写後ジーンサイレンシング(PTGS)で分解するべき「異常」なRNAを見分けるしくみ
正常なメッセンジャーRNA(トカゲ)は3´末端のポリA鎖(尻尾)がRDR6(ブラシ)から逃れる目印になることでPTGS機構による分解から免れるが(上)、3´末端にポリA鎖を欠いた異常なメッセンジャーRNAはRDR6によって二本鎖化されPTGS機構によって分解される(右)。
© 2017 Kyungmin Baeg、岩川弘宙、泊幸秀

東京大学分子細胞生物学研究所のKyungmin Baeg(キョンミン・ベグ)大学院生、岩川弘宙助教、および泊幸秀教授の研究グループは、数珠状につながった核酸の構造がRNAの尻尾についているかどうかに基づいて、そのRNAが異物なのかそうでないのかを植物の生体防御機構が判断していることを明らかにしました。この発見は、なぜ植物において自身のRNAが自身の生体防御機構から逃れることができるのか、という四半世紀にわたる謎を解き、さらに有用な作物の創出にかかわるバイオテクノロジーの開発につながる可能性も期待されます。

免疫系はウイルスや外来の異物を退治することで病気や感染症から私たちを守ります。植物も転写後ジーンサイレンシングという仕組みで外来のウイルスなどから自身を防衛します。転写後ジーンサイレンシングは外来のRNAを攻撃しますが、植物自身のRNAは区別して攻撃しません。

「先行研究で、RNAの末端にアデノシンヌクレオチドが連なってできるポリA鎖と、キャップ構造と呼ばれるRNAの先端にある特徴的な構造のどちらか、あるいは双方を欠いていることが、植物の生体防御機構を発動させる目印になることが示唆されていました。しかし、現在まで確たる証拠がありませんでした」とNature Plantsに掲載された本研究の共著者である岩川助教は説明します。

「古典的な生化学の技術を用いるのが私たちの研究室の強みです。生化学的な手法を用いると、試験管内で生物学的なプロセスを再現し、反応に関わっている分子を同定してその振る舞いを説明することができます。それがまさに今回行ったことです」と泊教授は続けます。 研究グループはシロイヌナズナという小さな花を咲かせる植物がもつ、RNA依存性RNAポリメラーゼ6(RDR6)という生体防御機構を発動するために重要な酵素を合成し、精製・単離しました。そして様々な長さのポリA鎖をつけたRNAと混合したときにRDR6がどのように振舞うのかを観察しました。

研究チームは、ポリA鎖が末端についているRNAはRDR6によって外来のRNAだとは認識されない一方で、ポリA鎖がないRNAはRDR6によって外来のRNAだと認識されて、生体防御機構の標的となる形(二本鎖RNA)に変換されることを発見しました。 「私たちはもともと、二種類のRNAを区別するのに複数のタンパク質が関わっていると予想していました」とBaeg大学院生は言い、次のように続けます。「驚いたことに、RDR6自体がポリA鎖の存在を認識していることが判明しました。たった一つの酵素で敵味方を識別する仕組みは、私たちがはじめに予想していたのよりもとてもシンプルで、かつ美しいシステムでした」。

論文情報

Kyungmin Baeg, Hiro-oki Iwakawa, and Yukihide Tomari, "The poly(A) tail blocks RDR6 from converting self mRNAs into substrates for gene silencing", Nature Plants Online Edition: 2017/03/21 (Japan time), doi:10.1038/nplants.2017.36.
論文へのリンク(掲載誌

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