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「セシウム花粉」の内部被ばく影響は砂埃に比べて無視できる 砂埃の吸入を防いで内部被ばく線量を低減

掲載日:2014年7月2日

2012年春は、東京電力福島第一原子力発電所の事故に由来する放射性セシウムがスギ花粉に吸着しており(セシウム花粉)、このセシウム花粉の飛散によって放射性セシウムが大気中に再拡散され、一般市民が吸入して内部被ばくを引き起こすことが懸念されて、社会的な関心事となった。

2012年3月2日と3日に実際に被験者が着用したマスクとマスクに付着した放射性セシウム源のイメージングプレート像との合成像と、その部分の拡大写真

© 2014 Shogo Higaki.
2012年3月2日と3日に実際に被験者が着用したマスクとマスクに付着した放射性セシウム源のイメージングプレート像との合成像と、その部分の拡大写真

東京大学アイソトープ総合センターの桧垣正吾助教らの研究グループは、東日本在住の一般市民68名が2012年2月19日~4月14日の8週間実際に着用した市販の不織布製マスクに付着した放射性セシウム(福島県および東京都在住の方についてはスギ花粉数も)の量を分析して、吸入による内部被ばくを引き起こす可能性のある放射性セシウム源は、スギ花粉ではなく、砂埃とみられる物質によるものであることを明らかにした。

マスクに付着した放射性セシウムの8週間の合算の最大値は、セシウム-137(137Cs)が21 ± 0.36 Bq(ベクレル)、セシウム-134(134Cs)が15 ± 0.22 Bqであり、この8週間の吸入による内部被ばくを算定すると、0.494 µSvとなった。この値から1年間の内部被ばく線量を見積もると3.2 µSvとなり、公衆の被ばく限度である1mSv/年の310分の1であったが、砂埃の吸入を防ぐことにより、さらに内部被ばく線量を低減できる。

なお、東京電力福島第一原子力発電所事故によって環境中に放出されたセシウムのうち、半減期が比較的長い2つの放射性同位体のことをいう。セシウム-137は放射線を出して壊変して約30年で半分の数になる(半減期約30年)。一方、セシウム-134の半減期は約2年である。

プレスリリース

論文情報

Shogo Higaki*, Hideharu Shirai, Masahiro Hirota, Eisuke Takeda, Yukiko Yano, Akira Shibata, Yoshitaka Mishima, Hiromi Yamamoto and Kiyoshi Miyazawa,
“Quantitation of Japanese cedar pollen and radiocesium adhered to nonwoven fabric masks worn by the general population”,
Health Physics August 2014 – Volume 107 – Issue 2 – p 117-134, doi: 10.1097/HP.0000000000000078.
論文へのリンク

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