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政策提言:日本の分野横断型エネルギー・環境研究の改革の必要性 東日本大震災から5年

掲載日:2016年3月9日

© IAEA Imagebank, on Flickr, https://www.flickr.com/photos/iaea_imagebank/, Photo Credit: Greg Webb / IAEA2013年11月27日、東京電力の福島第一原子力発電所を訪問し、4号機の燃料集合体取り出しプロセスを確認するIAEAの調査団。前の週に、東京電力は燃料集合体を4号機から使用済燃料プールに移す作業を始めたところでした。

福島第一原子力発電所での燃料集合体の取り出しプロセス
2013年11月27日、東京電力の福島第一原子力発電所を訪問し、4号機の燃料集合体取り出しプロセスを確認するIAEAの調査団。前の週に、東京電力は燃料集合体を4号機から使用済燃料プールに移す作業を始めたところでした。
© IAEA Imagebank, on Flickr, https://www.flickr.com/photos/iaea_imagebank/, Photo Credit: Greg Webb / IAEA

東京大学政策ビジョン研究センターの杉山昌広講師らは、東日本大震災から5年が経とうとしている今、日本のエネルギー・環境政策を活気づけるためには、政策の基礎となるエネルギー・環境研究をより学際的にし、国際化する必要があると呼びかけます。

あと数日で、東日本大震災と、15,000人以上の犠牲者を出し、福島第一原子力発電所を壊滅させた津波から、5年。日本は東日本大震災以降、さまざまなエネルギー・環境政策を打ち出してきました。しかし、原子力の安全性や再生可能エネルギー、原子炉の廃炉に関する政策の論争は絶えることがありません。 杉山講師らは、エネルギー・環境政策立案に際して情報を提供し、改良するのに必要な堅固な科学的基礎科学的基礎を発展させるために分野横断型の研究や研究の国際化を強化していく必要がある、と指摘します。

「日本の政策関連の研究者は、日本語だけで出版する習慣があります。これらの成果を伝える政策決定者が日本語話者なので無理もありません」と杉山講師は話します。「数々のノーベル賞受賞者を生み出してきた基礎研究の分野とは異なり、分野横断型研究を評価できる研究者は国内にそれほど多くいません。国際化を進めれば分野横断型研究を評価できる研究者の数が増えるでしょう」。

著者らは、例えば、PRA(確率的リスク評価)研究などでは分野横断型の研究が少ないと指摘します。PRAは日本の原子力発電所の事故リスクを測るために使用されたツールですが、地震以前には、機械の破損と人的ミスなど工学を主体にしたPRA研究が多く、地震学、地質学、大気学、経済モデリングも含めた研究はほとんど見られませんでした。米国、イギリス、フランスなどの原子力エネルギー使用国とは対照的です。

「分野横断型研究が難しいと聞くと、自然科学と人文社会科学の話かと思うと思います。もちろん、これも課題のひとつなのですが、日本では、それ以前に自然科学と工学分野をつなぐ努力も結実していません」と、共著者の城山英明公共政策大学院長は説明します。

科研費のような研究費の審査に外国人研究者を加え、また、日本の研究助成機関は、政策関連研究に携わる研究者に成果の一部を国際的な雑誌に投稿し、国際的な研究の恩恵を享受し、かつ、日本の経験を世界と共有できるような政策関連研究を設計すべきと著者らは主張します。

「世界に波及効果のある311のような事件は一例でしかありません。研究コミュニティが率先して研究の国際化を図っていくことで、政策関連研究の国際化の布石となることを期待しています」と政策ビジョン研究センターの谷口武俊教授は言います。

プレスリリース

論文情報

Masahiro Sugiyama, Ichiro Sakata, Hideaki Shiroyama, Hisashi Yoshikawa, "Research Management: Five years on from Fukushima", Nature Online Edition: 2016/03/03 (Japan time), doi:10.1038/531029a.
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政策ビジョン研究センター 複合リスク・ガバナンスと公共政策研究ユニット

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