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マウス頭部に小さな実験室を作る「ラボ・オン・ブレイン」を開発 生きた神経細胞のシナプスを53日間観察

掲載日:2014年10月30日

東京大学大学院工学系研究科の一木隆範准教授らと同医学系研究科の河西春郎教授らの研究グループは、マウスの頭部上に搭載する小さな実験室「ラボ・オン・ブレイン」を世界で初めて開発し、生きているマウスの神経細胞の活動を53日間に亘り観察することに成功しました。昨今の研究トレンドである省エネルギー・省物質の「ラボ・オン・チップ」の、生体への応用を実現しました。

マウスの頭部に搭載することが可能で、神経細胞の微小構造の2光子顕微鏡による高解像観察と神経細胞への薬物の付与や除去を支援する機能を兼ね備えたマイクロオプト流体デバイスは神経科学や脳の機能不全疾患の治療研究に役立つ新たな実験プラットフォームとして期待されます。

© 2014 Takanori Ichiki.
マウスの頭部に搭載することが可能で、神経細胞の微小構造の2光子顕微鏡による高解像観察と神経細胞への薬物の付与や除去を支援する機能を兼ね備えたマイクロオプト流体デバイスは神経科学や脳の機能不全疾患の治療研究に役立つ新たな実験プラットフォームとして期待されます。

脳機能や脳疾患を解明するには、生きた脳で神経細胞を調べる必要があります。しかし、脳内へ直接試薬を投与するなどの実験操作を不用意に加えると、脳は容易に損傷して本来の機能が失われる可能性があります。そのため、本研究グループは、生きている脳の観察を強力に支援し、脳と外界を仲介するインターフェイス機能を備えたマイクロオプト流体デバイスを開発しました。

本デバイスは観察用ガラス窓や髪の毛程度の細い試薬用流路を備えています。このデバイスと2光子レーザー顕微鏡を用いることで、脳機能に密接に関わる神経細胞の棘状突起構造「スパインシナプス」のわずかな構造変化を、1カ月以上、継続して観察できました。さらに、脳組織へ光解離性試薬を注入しながら、レーザー光でこの試薬を分解してシナプス可塑性刺激を繰り返し与えたところ、シナプス強度の指標となるスパインの形態の変化を任意のスパインシナプスに生じさせることに成功し、さらにその変化が数日以上持続することを世界で初めて確認しました。

このデバイスの実現に用いられた技術は、記憶・学習などの脳機能の解明や、統合失調症・躁うつ病など、脳の機能不全疾患の治療研究への応用が期待されます。

プレスリリース

論文情報

Hiroaki Takehara, Akira Nagaoka, Jun Noguchi, Takanori Akagi, Haruo Kasai and Takanori Ichiki,
“Lab-on-a-brain: Implantable micro-optical fluidic devices for neural cell analysis in vivo”,
Scientific Reports Online Edition: 2014/10/22 (Japan time), doi: 10.1038/srep06721.
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