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葉?それとも枝? アスパラガス属が持つ葉のような器官「仮葉枝」の進化の過程を解明

掲載日:2012年4月5日

植物の地上部は主茎と葉、そして葉の脇から発生する枝からなり、そのそれぞれの形が変化することで、25万種と言われる程の多様な形を示します。しかし、葉以外の形の多様化の過程については、そのほとんどが明らかになっていません。

Asparagus属植物の仮葉枝の形態. Asparagus asparagoidesの仮葉枝 (左)とA. officinalisの仮葉枝 (右). © Hokuto Nakayama

Asparagus属植物の仮葉枝の形態. Asparagus asparagoidesの仮葉枝 (左)とA. officinalisの仮葉枝 (右). © Hokuto Nakayama

アスパラガス属の植物は、葉が鱗片状に小さく退化し、枝を生じるべき位置に仮葉枝と呼ばれる葉のような形の器官をつくります。また、光合成も主にこの器官で行なわれています。この仮葉枝は、形や機能の面からもまるで葉のようでありながら、その生じる場所は枝の位置であるために、葉とも、枝の変形とも解釈することができ、植物の地上部の形の多様化の一例として興味深い研究対象です。

東京大学大学院理学系研究科の塚谷裕一教授らの研究グループは、仮葉枝を用いた形態学的および発生学的解析から、仮葉枝は葉および枝、そのどちらとも異なる特殊な器官であることを見いだしました。加えて分子生物学的解析から、仮葉枝では枝が発達する時にはたらく遺伝子の他に、本来は葉ではたらく遺伝子群が発現していることも明らかにしました。さらに、形が異なる仮葉枝では、この葉ではたらく遺伝子の発現パターンが変化していることも明らかにしました。

これらの結果から、アスパラガス属植物の仮葉枝の起源は枝であり、本来、葉ではたらく遺伝子群が枝に流用されることで葉状の形となったこと、その遺伝子群の使われ方が変化することで、属内の仮葉枝の形が変化したということを示しました。

今回の研究は、枝の形の多様化に関する過程を明らかにしただけではなく、植物における独自の器官の獲得とその多様化には、既に存在する遺伝子群の流用とその改変が重要であることを示す成果であると言えます。

プレスリリース

論文情報

Hokuto Nakayama, Takahiro Yamaguchi, and Hirokazu Tsukaya,
“Acquisition and Diversification of Cladodes: Leaf-Like Organs in the Genus Asparagus”,
The Plant Cell March 2012 tpc.111.092924 doi: 10.​1105/​tpc.​111.​092924
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