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光磁場による研磨 光磁場による光化学反応の観測に成功

掲載日:2016年3月31日

©  2016 Takashi Yatsui.上:ジルコニウムのストライプ構造に対して入射電場が垂直の場合。下:ストライプ構造に対して入射電場が平行の場合。

局所的な光磁場によってジルコニウム(ZrO2)が加工される様子
上:ジルコニウムのストライプ構造に対して入射電場が垂直の場合。下:ストライプ構造に対して入射電場が平行の場合。
© 2016 Takashi Yatsui.

東京大学大学院工学系研究科の八井崇准教授と分子科学研究所の信定克幸准教授らの研究グループは、光の振動方向を制御した光による表面研磨法を用いることで、高い振動数を持つ光の周波数(約1ペタヘルツ。1秒間に1000兆回振動)の振動磁場によって物質を加工することが可能であることを世界で初めて明らかにしました。

電子デバイスや光デバイスの開発には、ナノメートルサイズの基盤の表面を平たんにする技術が欠かせません。化学物質や物理的に研磨する従来の方法による平たん化では、基板が損なわれたり、異物が基板に残ってしまうという問題がありました。この問題を解決するため、研究グループは、光を利用して基板に接することなく平たん化できる近接場光エッチングという手法を確立しています。一方、研磨を含む光を用いた加工では、光による磁石的な力(磁場)ではなく、光による電気的な力(電場)が研磨に寄与していると考えられていました。

今回研究グループは、ダイヤのような透明で高い屈折率を有するジルコニア(ZrO2)の表面の凸凹が光エッチング法により研磨される表面形状を観測したところ、この凸凹の研磨には、磁場が大きく関与していることがわかりました。

「今回、これまで見過ごされていた光の周波数で振動する磁場が加工に利用できることを発見しました。光は電磁波であり電場と磁場が交互に発生していますが、光の周波数領域において発生する磁場は物質に影響を与えないことから、光加工において、磁場による影響は無視され、電場のみが想定されていました」と八井准教授は説明します。「ですから、これまでの常識と異なる結果が得られたのは驚くべきことです。今回の発見は純粋な基礎研究への寄与だけではなく、より複雑な微細加工の制御に大きく役立つと期待しています」と続けます。

なお、本研究は、JSPS「研究拠点形成事業(A.先端拠点形成型)」、科研費(26286022、26630122、25288012、15H00866)、文科省ナノテクノロジープラットフォーム(No.12024046)、HPCI戦略プログラム(ID: hp150218)、光科学技術研究振興財団の助成を得て行われ、東京大学、分子科学研究所、中央大学、仏ミュールーズ物質科学研究所(IS2M)、仏パリ13大学との共同研究により行われました。

論文情報

T. Yatsui, T. Tsuboi, M. Yamaguchi, K. Nobusada, S. Tojo, F. Stehlin, O. Soppera, D. Bloch, "Optically controlled magnetic-field etching on the nano-scale", Light: Science & Applications Vol. 5, Page number: e16054, doi:10.1038/lsa.2016.54.
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