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シャボン玉のように人工細胞を作る!! 細胞膜の非対称性の謎に迫る人工細胞膜の形成に成功

掲載日:2016年8月3日

© 2016 Aki Sato.リン脂質の分子運動や膜タンパク質の取込みの増大が確認された。リン脂質非対称性の謎に迫るツールとして利用が可能。

細胞膜を模倣したリン脂質組成非対称リポソームの断面イメージ
リン脂質の分子運動や膜タンパク質の取込みの増大が確認された。リン脂質非対称性の謎に迫るツールとして利用が可能。
© 2016 Aki Sato.

東京大学生産技術研究所の竹内昌治教授と神奈川科学技術アカデミーの神谷厚輝研究員らの研究グループは、MEMS技術を利用して、異なった種類のリン脂質から構成される外膜と内膜からなる細胞膜の組成を模倣した球体(リン脂質組成非対称膜リポソーム)の作製に成功しました。今回開発した方法では、有機溶媒を残すことなく球体を作製でき、今後の人工細胞モデル構築研究における基盤技術として貢献することが期待されます。

マイクロ流体デバイスを用いたリポソーム作製は、古典的なリポソーム作製に比べ、大きさの制御やリポソーム内への物質封入効率が高いといった利点があります。しかし、マイクロデバイスを用いた手法では、膜内へ有機溶媒が混入することが避けられず、リポソームの安定性が大きく影響され、人工細胞の研究ツールとしては適していませんでした。

今回、研究グループはリン脂質平面膜にジェット水流を加えてシャボン玉を作るような方法で有機溶媒層が含まれないリポソームを作製することに成功しました。このリン脂質組成非対称膜リポソームでは、実際に細胞死が起こる同程度の時間でリン脂質が反転する運動を観察しました。また、膜と相互作用するタンパク質の断片(ペプチド)をこのリポソームに添加したところ、リン脂質の反転運動が通常の約10倍促進されました。さらに、外膜に負電荷のリン脂質が存在する非対称膜組成では、膜タンパク質の取込みが増大することが明らかになりました。

「この非対称膜リポソームを用いて、リン脂質の分子運動や膜タンパク質の取込みの観察が可能になります」と竹内教授は話します。「この非対称膜リポソームはリン脂質の謎に迫るツールとして利用されることを期待しています」と続けます。

なお、本成果は東京大学、公益財団法人神奈川科学技術アカデミー、京都大学と共同で得られたもので、「Nature Chemistry」に公開されました。

プレスリリース

論文情報

Koki Kamiya, Ryuji Kawano, Toshihisa Osaki, Kazunari Akiyoshi and Shoji Takeuchi, "Cell-sized asymmetric lipid vesicles facilitate the investigation of asymmetric membrane", Nature Chemistry Online Edition: 2016/06/14 (Japan time), doi:10.1038/NCHEM.2537.
論文へのリンク(掲載誌

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生産技術研究所

大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻

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神奈川科学技術アカデミー 人工細胞膜システムグループ

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