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生物の持つ多燃料エンジンが働く仕組み べん毛モーターのイオン透過機構を解明

掲載日:2015年6月29日

© 2015 西原 泰孝、北尾 彰朗今回明らかになったタンパク質複合体MotA/Bの立体構造モデルより、プロトンがヒドロニウムイオン(青)としてゲート(緑)を通って透過することによって、水分子の連なり(赤と白)が形成され、プロトン結合部位(黄色)までのプロトン移動を促すと示唆される。

べん毛モーター固定子タンパク質複合体MotA/Bのプロトン透過
今回明らかになったタンパク質複合体MotA/Bの立体構造モデルより、プロトンがヒドロニウムイオン(青)としてゲート(緑)を通って透過することによって、水分子の連なり(赤と白)が形成され、プロトン結合部位(黄色)までのプロトン移動を促すと示唆される。
© 2015 西原 泰孝、北尾 彰朗

東京大学大学院総合文化研究科の西原泰孝特任研究員と同分子細胞生物学研究所の北尾彰朗准教授は、大腸菌が持つべん毛のモーターを構成する「固定子」にあたるタンパク質複合体の立体構造モデルを実験データと計算機シミュレーションによって初めて構築し、水素イオン(プロトン)などのイオンが固定子の内部を透過する機構の一端を明らかにしました。

大腸菌やサルモネラ菌などの細菌は、細胞内外のイオン濃度の差に起因するエネルギーを非常に効率よく利用して、べん毛のモーターとスクリューにあたるべん毛繊維を回転させ泳いでいます。細菌のべん毛モーターには、プロトンを固定子に透過させて回転のために必要なエネルギーを作り出すものや、ナトリウムイオンや複数のイオンを利用するものもあります。しかし、細菌のべん毛モーターの原子構造はこれまで未解明で、イオンを透過する詳しい仕組みも明らかになっていませんでした。

今回、西原泰孝特任研究員と北尾彰朗准教授は、これまで未解明だったべん毛のモーターの固定子であるタンパク質複合体MotA/Bの立体構造モデルを構築し、プロトンがヒドロニウムイオンとしてこの膜貫通タンパク質の内部を透過する機構と、プロトンの透過がモーターの回転方向を一方向に制限するラチェットレンチのような動き(ラチェット運動)を生み出すことを明らかにしました。

このような高効率なエネルギー変換の機構を明らかにすることは、エネルギーを有効に利用できる生物の仕組みを理解するために重要です。

プレスリリース

論文情報

Nishihara Yasutaka and Akio Kitao, "Gate-controlled proton diffusion and protonation-induced ratchet motion in the stator of the bacterial flagellar motor", Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America Online Edition: 2015/6/9 (Japan time), doi:10.1073/pnas.1502991112.
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分子細胞生物学研究所 計算分子機能研究分野

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