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Research News

植物の成長を制御する仕組み

カルシウムシグナリングとNLP転写因子が担う窒素栄養への応答

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生物生産工学研究センター
2017/07/28

© 2017 柳澤修一硝酸イオンの吸収に伴って細胞内カルシウムイオン濃度が上昇するとカルシウム依存性タンパク質リン酸化酵素が活性化され、NLP転写因子をリン酸化します。リン酸化されたNLP転写因子は活性型となり、様々な遺伝子の発現を誘導して植物の成長を促します。

硝酸イオンは栄養シグナルとして転写制御を介して植物の成長を促す
硝酸イオンの吸収に伴って細胞内カルシウムイオン濃度が上昇するとカルシウム依存性タンパク質リン酸化酵素が活性化され、NLP転写因子をリン酸化します。リン酸化されたNLP転写因子は活性型となり、様々な遺伝子の発現を誘導して植物の成長を促します。
© 2017 柳澤修一

東京大学生物生産工学研究センターの柳澤修一教授らの共同研究グループは、植物が硝酸イオンを栄養シグナルとして感知して成長を促すメカニズムを明らかにしました。本成果は、将来的に農業における肥料の効率的な利用につながると期待されます。

植物は土壌からアンモニウムイオンや硝酸イオンなどを栄養源として吸収して成長します。植物に吸収された硝酸イオンは植物の代謝や成長を調節する信号(シグナル)としても作用します。植物が硝酸イオンを感知して土壌栄養環境に適応しているということは何十年も前に報告されていましたが、長らくその機構は不明なままでした。しかし数年前に、硝酸シグナルは窒素栄養環境への適応を担う鍵因子であるNLP転写因子を活性化することで様々な遺伝子の発現を促すことが分かってきました。

今回、硝酸イオンの吸収に伴って細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇すること、これによりカルシウム依存性のタンパク質リン酸化酵素が活性化されてNLP転写因子をリン酸化することが分かりました。リン酸化されたNLP転写因子は活性型となって、窒素同化や炭素代謝、植物ホルモンの代謝、次のステップの遺伝子発現の制御を担う転写因子などの遺伝子の発現を引き起こし、植物の成長を促します。

現代の農業では、作物の収量を増加させるためにたくさんの窒素肥料を栄養として投入しています。窒素栄養がシグナルとして植物の成長を調節する機構が完全に明らかになれば、窒素肥料の効率的な利用に結び付けられる可能性があります。

「数年前に、私達はこの硝酸イオンへの応答を担う鍵因子としてNLP転写因子を同定しました。しかしながら硝酸シグナルがどうやってNLP転写因子の働きを調節しているのかまではわかりませんでした」と柳澤教授は話します。「今回、その調節機構の実体をとうとう明らかにすることができ、非常に感慨深いものがあります」と続けます。

なお本研究は、米国ハーバード大学、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校と共同で行われたものです。

論文情報

Kun-hsiang Liu, Yajie Niu, Mineko Konishi, Yue Wu, Hao Du, Hoo Sun Chung, Lei Li, Marie Boudsocq, Matthew McCormack, Shugo Maekawa, Tetsuya Ishida, Chao Zhang, Kevan Shokat, Shuichi Yanagisawa & Jen Sheen, "Discovery of nitrate–CPK–NLP signaling in central nutrient–growth networks", Nature Online Edition: 2017/05/10 (Japan time), doi:10.1038/nature22077.
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