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微生物の電気共生 電気的共生が微生物による物質変換を促進する

掲載日:2012年6月12日

マグネタイトを介した電気共生により生育したゲオバクターとチオバチルス ©Soichiro Kato
チオバチルスの細胞はゲオバクターより大きい。どちらの細菌の細胞にもマグネタイト粒子が付着し、それらを通して電気が流れていると考えられる。

工学系研究科応用化学専攻橋本和仁教授は、科学技術振興機構(JST)、および東京薬科大学と共同で、クリーンエネルギー分野において期待される微生物燃料電池の研究開発を行ってきました。微生物燃料電池はバイオマスから電気エネルギーを生産するプロセスとして、また省エネ型廃水処理プロセスとして有望であり、世界中で活発に研究開発が進められています。しかし、微生物がなぜ人工的な電極と相互作用し、電子を授受する能力を有しているかについては不明でした。

本研究では、環境中にも電極や電線が存在し、微生物が電子のやり取りをしているのではないかと考え、二種の土壌微生物(ゲオバクターとチオバチルス)の共生系に環境中に普遍的に存在する導電性酸化鉄(マグネタイト)粒子を添加したところ、従来の共生的代謝に比べて反応速度が10倍以上に上昇することを発見しました。このことは、導電性酸化鉄中を電子が流れ、二種微生物の代謝が連結されたことを意味しています。

環境中には多様な微生物が生息し、それらの間には様々な相互作用があると予想されています。しかし、パスツールにより開発された単離・純粋培養技術を基盤に発展してきた現代の微生物学において、微生物間の相互作用に関する知見は非常に限られています。本研究の成果は、環境中の微生物の未知の共生関係を解き明かすものとして、また微生物燃料電池やバイオガス生産を高効率化するための基盤として、幅広くインパクトを及ぼすものと考えられます。

プレスリリース

論文情報

Kato S., Hashimoto K., Watanabe, K.,
“Microbial interspecies electron transfer via electric currents through conductive minerals”,
Proceedings of the National Academy of Sciences. Online Edition: 2012/6/5 (Japan time), doi: 10.1073/pnas.1117592109.
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大学院工学系研究科

応用化学専攻

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