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Research News

痛みを運ぶ分子モーター

細胞内の輸送が痛みニューロンの感受性を高める

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医学系研究科・医学部
2016/07/08

©  2016 田中庸介、廣川信隆痛みを知覚するマウス感覚ニューロンの免疫染色像(白色の細胞)。痛みニューロンはこれらの細胞体から末梢の皮膚と脊髄内の両者へと軸索を伸ばしていますが、KIF1Aの作用で痛みを正常に知覚し、中枢に伝えます。

脊髄後根神経節の痛みニューロン
痛みを知覚するマウス感覚ニューロンの免疫染色像(白色の細胞)。痛みニューロンはこれらの細胞体から末梢の皮膚と脊髄内の両者へと軸索を伸ばしていますが、KIF1Aの作用で痛みを正常に知覚し、中枢に伝えます。
© 2016 田中庸介、廣川信隆

東京大学大学院医学系研究科の廣川信隆特任教授、田中庸介助手らの研究グループは、私たちの痛みの感覚には分子モータータンパク質によるタンパク質の輸送が関与していることを、マウスを用いた実験により示しました。痛みを制御するための新たな創薬ターゲットとして、分子モータータンパク質の有用性が期待されます。

痛みの感覚は末期癌などの慢性疾患の患者の生活の質を極度に下げるものです。同時に、痛みや熱さの感覚は、まったくなければ日常生活の上で大きな支障を来たす感覚でもあります。私たちの痛みの感覚がどのように制御されているか、という分子的機構には実はまだ不明な点が多く残されています。

今回、研究グループは分子モータータンパク質の一種、KIF1Aの遺伝子機能が半分損なわれたマウスを作出したところ、熱さや痛みの感覚に進行性の障害があることがわかりました。さらなる分析の結果、研究グループは、外界からの刺激を最初に受け取って伝える神経細胞(一次感覚ニューロン;図)の突起内(軸索末端)へと神経栄養因子受容体チロシンキナーゼTrkAを載せた膜状の構造(膜小胞)をKIF1Aが輸送し、TrkAのシグナルが痛みを認識するタンパク質(TRPV1受容体)の感受性を上げることによって、正常な痛みの感覚が生じていることを発見しました。

全45種類以上のKIF分子モーターはヒトのすべての細胞内において、ミクロの貨物列車のような細胞内物質の輸送の鍵を担っている機能分子ですが、その機能的意義はまだ少ししかわかっていませんでした。今回の成果は、生命の根源的な機能を担うKIF分子モーターの一次感覚ニューロンにおける新しい生理機能・臨床的意義をはじめて解明する成果です。

「KIF分子モーターはあらゆる生命機能の要であることを改めて感じています」と廣川特任教授は話します。「われわれの痛みの感覚もまさに同様ですね」と続けます。

プレスリリース

論文情報

Yosuke Tanaka, Shinsuke Niwa, Ming Dong, Atena Farkhondeh, Li Wang, Ruyun Zhou, Nobutaka Hirokawa, "The Molecular Motor KIF1A Transports the TrkA Neurotrophin Receptor and Is Essential for Sensory Neuron Survival and Function", Neuron: 2016/06/03 (Japan time), doi:10.1016/j.neuron.2016.05.002.
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