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多くの匂い情報を識別できる仕組み 定説を覆す脳内の巧妙情報処理様式が明らかに

掲載日:2013年5月9日

東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・聴覚音声外科 教授 山岨達也、菊田周は、テキサス大学医学部ヒューストン校 助教 永山晋との共同研究において、マウスの脳内で「匂い」識別に関わる基本構造単位である細胞群を可視化することに初めて成功しました。さらに、基本構造単位内における細胞が空間的にどのように配置しているかによって神経活動が多様化していることを見つけました。

© Shu Kikuta. ぶどうの房は糸球体モジュールを表し、ぶどうの粒は細胞を表す。微弱電流(雷で表現)によって中央のぶどうの房全体像を浮かび上がらせ、さらに光を当ててぶどうの色を詳細に観察した。ぶどうの房は同じ色の粒で構成されているのではなく、様々な色の粒(異なる匂い応答)によって構成されていた。

マウスの嗅球は、鼻に吸い込まれた「匂い」を最初に処理する脳の領域であり、私達がどのようにして多くの「匂い」情報を識別しているのかを知るうえで手がかりとなる領域です。しかし、嗅球の細胞が吸い込まれた「匂い」をどのように連携して処理し、「匂い」識別のしくみに関わっているのかはよく分かっていません。

本研究グループは、同じ「匂い」受容体から情報を受け取る細胞群を選択的に可視化し、その神経活動を直接計測、比較することに成功しました。その結果、細胞の深さ方向や横のひろがりといった空間配置によって、神経活動に違いが生じることを突き止めました。これは、同じ受容体から情報を受け取る細胞群は、「同じ受容体からの刺激に同じように反応する」とするこれまでの定説を覆し、「同じ受容体からの刺激に多様に反応する」巧妙な情報処理様式が嗅球の基本構造単位内に存在することを示しています。これにより、私たち哺乳類は限られた「匂い」受容体でより多くの「匂い」情報を識別できると考えられます。

この発見は、私たちの脳内で行われる「匂い」情報処理機構の理解を深めるだけではなく、中枢性嗅覚障害の病態生理解明の糸口となることが期待されます。

プレスリリース

論文情報

Shu Kikuta, Max L. Fletcher, Ryota Homma, Tatsuya Yamasoba, Shin Nagayama,
“Odorant Response Properties of Individual Neurons in an Olfactory Glomerular Module”,
Neuron Vol. 77, Issue 6, 2013, March 20, 1122-1135, doi: 10.1016/j.neuron.2013.01.022.
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