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Research News

省エネ・高効率な光学素子の新原理を実証

量子化された磁気光学効果をトポロジカル絶縁体で観測

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工学系研究科・工学部
2016/09/13

© 2016 岡田 健トポロジカル絶縁体に磁性元素(青色の矢印)を添加して、磁石の性質を持たせると、表面の電子のエネルギーに間隔(質量ギャップ)が生じる。その結果、量子異常ホール効果と呼ばれる、磁場をかけなくてもホール抵抗が量子化される現象が現れる。このとき、質量ギャップよりも十分にエネルギーの小さいテラヘルツ光に対するファラデー効果とカー効果は、微細構造定数で規定された回転角を示す。図中に示したのはファラデー効果による偏光の回転。

トポロジカル絶縁体における量子化された磁気光学効果の概念図
トポロジカル絶縁体に磁性元素(青色の矢印)を添加して、磁石の性質を持たせると、表面の電子のエネルギーに間隔(質量ギャップ)が生じる。その結果、量子異常ホール効果と呼ばれる、磁場をかけなくてもホール抵抗が量子化される現象が現れる。このとき、質量ギャップよりも十分にエネルギーの小さいテラヘルツ光に対するファラデー効果とカー効果は、微細構造定数で規定された回転角を示す。図中に示したのはファラデー効果による偏光の回転。
© 2016 岡田 健

東京大学大学院工学系研究科の岡田健大学院生、高橋陽太郎特任准教授、十倉好紀教授らの共同研究グループは、表面は電気を通す一方、内側は電気を通さない性質をもつトポロジカル絶縁体に、磁石の性質を持たせて光を当てると、磁気光学効果により偏光が回転し、その回転する角度が量子力学で理論的に予想される普遍的な値を示すことを実証しました。

ファラデー効果やカー効果などの磁気光学効果とは、磁石の性質を持つ物質(磁性体)に光を当てたとき、透過光および反射光の偏光(振動電場の方向)が回転する現象のことを指し、磁性体において広く観測され、光通信素子や光磁気ディスクの原理として利用されています。トポロジカル絶縁体と呼ばれる物質に磁石の性質を与えると、表面の電子のエネルギーに間隔(質量ギャップ)が生じます(図)。このとき、量子異常ホール効果と呼ばれる、磁場の無い状況下で“量子化されたホール効果”が現れます。この状態のトポロジカル絶縁体の表面に光を照射すると、ファラデー効果とカー効果が発生し、偏光の回転する角度が、量子力学で規定される普遍的な値をとることが理論的に予想されていました。これは“量子化された磁気光学効果”であり、巨大な偏光の回転効率が磁場の無い状況下でかつエネルギー損失することなく現れることから、その観測が期待されていました。

今回、共同研究グループは、独自に開発したトポロジカル絶縁体の薄膜を使って、従来よりも高い温度(およそ摂氏マイナス270度)で安定な量子異常ホール効果を実現しました。その後、テラヘルツ光と呼ばれる、私たちが目で感じることのできる可視光と比べて、1/500程度のエネルギーの光をトポロジカル絶縁体に当てました。その結果、量子異常ホール効果が十分に発達した低温では、理論的に予測されていた通り、ファラデー回転角とカー回転角のみから定まる値が微細構造定数(~1/137)と呼ばれる物理の基本定数に向かって収束することを発見しました。

今回の測定では、8ナノメートルの薄膜で0.15度の角度だけ偏光が回転する様子を観測しましたが、これは厚さ1 センチメートル当たりで評価すると、200,000度の回転角度に相当します。この値は、従来の偏光回転素子よりも2桁近く大きい値です。このように、量子異常ホール効果を用いると、磁場の無い状況下でかつエネルギーを損失することなく高い偏光の回転効率を実現できることから、今後、テラヘルツ帯における省エネルギーで高効率な光学素子の実現につながると期待されます。

「理論的に予測されていたテラヘルツ光の偏光回転を実験室で観測した時には大変興奮しました」と高橋特任准教授は話します。「トポロジカル絶縁体は新しい物質として研究が急速に進展しており、これからも新しい量子現象が実現されていくでしょう」と続けます。

なお、岡田大学院生は理化学研究所 創発物性科学研究センター 強相関量子伝導研究チーム 大学院生リサーチ・アソシエイト、高橋陽太郎特任准教授は同センター創発分光学研究ユニット ユニットリーダー、十倉好紀教授は同センターセンター長も務めています。

プレスリリース

論文情報

K. N. Okada, Y. Takahashi, M. Mogi, R. Yoshimi, A. Tsukazaki, K. S. Takahashi, N. Ogawa, M. Kawasaki, and Y. Tokura, "Terahertz spectroscopy on Faraday and Kerr rotations in a quantum anomalous Hall state", Nature Communications Online Edition: 2016/07/20 (Japan time), doi:doi:10.1038/ncomms12245.

関連リンク

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大学院工学系研究科 物理工学専攻 十倉研究室

大学院工学系研究科 物理工学専攻 高橋研究室

大学院工学系研究科附属 量子相エレクトロニクス研究センター

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