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Research News

磁性体を用いて熱から発電を可能にする新技術

反強磁性体での巨大な異常ネルンスト効果の発見

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物性研究所
新領域創成科学研究科
2017/12/05

© 2017 冨田崇弘(a)磁化と温度勾配にともに垂直方向に起電力が発生します。この結果、(b)に示す微小な自発磁化の発生とともに大きな異常ネルンスト効果が現れます。

マンガン合金Mn3Snにおける異常ネルンスト効果
(a)磁化と温度勾配にともに垂直方向に起電力が発生します。この結果、(b)に示す微小な自発磁化の発生とともに大きな異常ネルンスト効果が現れます。
© 2017 冨田崇弘

東京大学物性研究所の中辻知教授と理化学研究所らの研究グループは、反強磁性体マンガン合金(Mn3Sn)において異常ネルンスト効果と呼ばれる巨大な磁気熱電効果を発見しました。磁性体での新たな熱電性能の制御の手法を示すこの研究は、熱電物質の将来の探索に有用なガイドラインを与えると期待されます。

この大きな異常ネルンスト効果は温度差を与えることでゼロ磁場でも自発的に現れる起電力です。これまで、異常ネルンスト効果は磁化に比例するものだと思われており強い磁化を持つ強磁性体では知られていましたが、磁化がゼロに近い反強磁性体でこれほど大きな効果は期待されていませんでした。

よく知られている異常ホール効果は一般的な強磁性体で見られる電流と直行して現れる電圧です。現代の電子輸送理論によれば、今回注目された異常ネルンスト効果は、異常ホール効果とともに電子の量子力学的波動関数の持つベリー位相として知られている量により関係づけられています。このベリー位相が起源となりスピン構造が作る仮想磁場により、電子の動きに影響を及ぼすことができます。この理論に基づくと、反強磁性体においても、スピン構造を制御して非共線構造にすれば、大きな異常ホール効果が出現すると期待されていました。実際、東京大学の同グループはこの非共線構造を持つMn3Snを用いて、世界で初めて反強磁性体においても強磁性体と同じかそれ以上の異常ホール効果を示すことを実験的に示しています。

東京大学物性研究所の研究グループは、新しく合成された純良単結晶試料でこの異常ネルンスト効果を研究してきました。その結果、驚くべきことに、磁化のサイズに比べて従来期待されている100倍以上もの大きな異常ネルンスト効果を発見しました。この値は、強磁性体の最も高い値と同等です。また二つの異なる組成から得られる実験的な変化が、理化学研究所のチームが行った仮想磁場の起源となるワイル準粒子の存在によって与えられる計算結果と定量的に一致することが分かりました。もし、将来他の方法でこの物質のワイル準粒子の存在が確かめられれば、現在、世界的に探索が進められている磁気ワイル粒子の発見につながることが期待されます。

新しい熱電材料として、この物質の異常ネルンスト効果は十分小さな磁化を持つため、非磁性半導体として知られている従来の熱電素子と比べた実用性に興味がもたれています。このネルンスト効果に基づく熱電素子の利点は、従来のものより構造が簡素化できる事にあります。また金属で柔軟なため熱源を効果的に覆うことができる点です。

「強磁性体で見つかった物と比べこのネルンスト効果は大きいが、一般的な目的のためにはまだ小さい」と中辻教授は述べています。彼は続けて、「しかしながらこの研究は磁性体の熱電利用へ大きな可能性を示している。将来の新規熱電物質へ発見への道は開かれている」と話しています。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出」研究領域における研究課題「トポロジカルな電子構造を利用した革新的エネルギーハーヴェスティングの基盤技術創製」並びに文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域(研究領域提案型)「J- Physics:多極子伝導系の物理」の一環として行われました。

プレスリリース

論文情報

Muhammad Ikhlas, Takahiro Tomita, Takashi Koretsune, Michi-To Suzuki, Daisuke Nishio-Hamane, Ryotaro Arita, Yoshichika Otani, Satoru Nakatsuji , "Large anomalous Nernst effect at room temperature in a chiral antiferromagnet", Nature Physics Online Edition: 2017/07/24 (Japan time), doi:10.1038/nphys4181.
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中辻研究室

大学院新領域創成科学研究科 物質系専攻

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