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Research News

がんの肝転移を抑える新たなしくみを発見

Dectin-2タンパク質ががんに対する自然免疫応答を促す

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生産技術研究所
医学系研究科・医学部
2016/12/06

© 2016 木村好孝Dectin-2はMCLと協調して、クッパー細胞のがん細胞に対する貪食を促すことで肝転移を抑える。一方、転移していない腫瘍(原発腫瘍)や肺転移ではこのような免疫応答は起こらない。

Dectin-2受容体によってクッパー細胞ががん細胞を除去する仕組み
Dectin-2はMCLと協調して、クッパー細胞のがん細胞に対する貪食を促すことで肝転移を抑える。一方、転移していない腫瘍(原発腫瘍)や肺転移ではこのような免疫応答は起こらない。
© 2016 木村好孝

東京大学生産技術研究所の木村好孝特任研究員と谷口維紹教授らの研究グループは、自然免疫応答に重要なタンパク質の一つDectin-2受容体が、がん細胞が肝臓に転移するのを抑えていることを、Dectin-2遺伝子を欠いたマウスを用いて発見しました。本成果は免疫細胞によるがん細胞の除去(貪食)を応用した、新たながん治療法の開発につながると期待されます。

がんを患った患者を死に至らしめる最も大きな要因の一つが、がん細胞の転移です。その中でも肝臓への転移は様々な種類のがんにおいて認められ、予後が悪いことが知られています。この肝臓への転移の制御には自然免疫系が関与していますが、その機構については多くが謎のままでした。

今回、研究グループは、Dectin-2受容体の遺伝子を欠いたマウスを用いて、本来自然免疫系が病原体を排除する際に重要なDectin-2受容体が、がんの進展を食い止めていることを明らかにしました。Dectin-2は細胞膜に発現するタンパク質ですが、このタンパク質が肝臓で異物を排除する働きのあるクッパー細胞と呼ばれる細胞が、がん細胞を取り込んで除く働き(貪食)を促していることを明らかにしました。興味深いことに、こうした免疫応答は皮下で腫瘍が増えるマウスやや肺にがん細胞が転移したマウスでは見られないことから、肝臓に特有の現象であることも判明しました。さらに、Dectin-2と結合して、複合体を形成することが報告されているMCL受容体が、Dectin-2と協調して、肝転移を抑えていることも明らかとなりました。

「Dectin-2はカンジダ菌などの感染を防ぐ上で重要な働きがあることがよく知られていました」と谷口特任教授は話します。「このタンパク質ががん細胞の除去においても重要な機能を果たしていることは大変興味深いです」と続けます。

なお、本研究は千葉大学の西城忍准教授、九州大学の山崎晶教授、東京理科大学の岩倉洋一郎教授との共同研究によって行われました。

論文情報

Yoshitaka Kimura, Asuka Inoue, Sho Hangai, Shinobu Saijo, Hideo Negishi, Junko Nishio, Sho Yamasaki, Yoichiro Iwakura, Hideyuki Yanai, and Tadatsugu Taniguchi, "The innate immune receptor Dectin-2 mediates the phagocytosis of cancer cells by Kupffer cells for the suppression of liver metastasis", Proceedings of the National Academy of Sciences Online Edition: 2016/11/22  (Japan time), doi:10.1073/pnas.1617903113.
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