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再燃前立腺がんの新たな治療標的を発見 新規長鎖非コードRNA作用のメカニズムを解明

掲載日:2013年6月28日

© Ken-ichi Takayama., Satoshi Inoue.
上)前立腺がん臨床サンプルにおけるin situ hybridizationによるCTBP1-ASの発現の検出。周辺正常組織にCTBP1-ASの発現は認められない一方、悪性度の高いがん組織中では腫瘍の核内を中心にCTBP1-ASの高い発現が認められました。
下)ホルモン療法抵抗性in vivo腫瘍モデルにおけるCTBP1-AS発現抑制の効果。CTBP1-ASの発現を低下させる核酸薬(siRNA)を注入すると腫瘍の増殖が抑制されました。

前立腺がんは最も発症頻度の高いがんのひとつで、その発症者、死亡者の急激な増加は、超高齢社会を迎えた日本においても大きな社会問題となっています。前立腺がんの発生と進展においては、男性ホルモンであるアンドロゲンの作用が鍵を握っており、アンドロゲンの作用を抑制するホルモン療法が広く普及しています。しかし、ホルモン療法に対する耐性ができてしまい治療効果が出なくなって再燃することが多く、問題になっています。この場合のホルモンの作用メカニズムの詳細については、これまで明らかになっていませんでした。今回、東京大学医学部附属病院22 世紀医療センター抗加齢医学講座の井上聡特任教授、老年病科の高山賢一特任臨床医らは、文部科学省の革新的細胞解析研究プログラム(セルイノベーション)と次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラムの支援を得て、次世代シーケンサーを活用し、新規の長鎖非コードRNA分子(遺伝子ではないゲノム領域から作られるタンパク質の情報を有さないRNA)であるCTBP1-AS がアンドロゲンの刺激を受けてがん遺伝子のように働くことを世界に先駆けて発見しました。さらに、CTBP1-AS は前立腺がんの増殖、進展に大きな役割を果たしていること、ならびにそのエピゲノム作用を介する分子メカニズムを解明しました。特に、ホルモン療法が奏功しない難治性前立腺がんの新たな治療の標的となりうることを明らかにしました。

この研究成果は日本時間5月3日午後11時に欧州科学雑誌(The EMBO Journal)に発表しました。

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論文情報

Takayama KI, Horie-Inoue K, Katayama S, Suzuki T, Tsutsumi S, Ikeda K, Urano T, Fujimura T, Takagi K, Takahashi S, Homma Y, Ouchi Y, Aburatani H, Hayashizaki Y, Inoue S,
“Androgen-responsive long noncoding RNA CTBP1-AS promotes prostate cancer”,
EMBO J 32 (2013): 1665 ? 1680, doi: 10.1038/emboj.2013.99.
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