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酸素発生型光合成はガラクト脂質がなくてもできる 30年ぶりに完全解明された糖脂質の合成経路に基づく発見

掲載日:2014年9月30日

東京大学大学院総合文化研究科の佐藤直樹教授と、静岡大学の粟井光一郎准教授、東京工業大学の太田啓之教授の研究グループは、光合成を行う細菌の一種であるシアノバクテリアの糖脂質合成経路の全容を解明し、あわせて、光合成生物に普遍的に存在するガラクト脂質が光合成に必須ではないことを初めて明らかにしました。

光合成の過程で酸素を発生させるシアノバクテリア、紅藻、緑色植物における糖脂質合成系の比較。今回発見されたmgdE遺伝子の産物は、グルコ脂質(GlcDG)をガラクト脂質(MGDG)に変換する過程を触媒する酵素であり、シアノバクテリアだけがこの代謝経路をもっている。これに対して、紅藻や緑色植物は、最初からガラクトースを結合したMGDGを合成する。

© 2014 佐藤 直樹
光合成の過程で酸素を発生させるシアノバクテリア、紅藻、緑色植物における糖脂質合成系の比較。
今回発見されたmgdE遺伝子の産物は、グルコ脂質(GlcDG)をガラクト脂質(MGDG)に変換する過程を触媒する酵素であり、シアノバクテリアだけがこの代謝経路をもっている。これに対して、紅藻や緑色植物は、最初からガラクトースを結合したMGDGを合成する。

シアノバクテリアは光合成の過程で酸素を発生させる細菌の一種で、植物や藻類の葉緑体の起源と考えられています。光合成の最初の反応は、ガラクトースという糖を1個または2個含む糖脂質(ガラクト脂質)からなる光合成膜の上で行われています。そして、シアノバクテリアではグルコース部分をガラクトースに変換することによってこの糖脂質を合成しています。

これまではガラクト脂質は光合成に必須であると思われていました。しかし、今回研究グループは、グルコ脂質をガラクト脂質に変換する酵素の遺伝子mgdEを同定しました。さらに,この遺伝子を欠損し、グルコ脂質のみからなる光合成膜によっても酸素の発生を伴う光合成が起きることを実証して、これまでの「常識」を覆しました。また、この糖脂質を合成する経路は、約30年前に佐藤教授が自身の博士論文で推定していたもので、今回、その経路を構成するすべての酵素の遺伝子が解明されたことになります。

論文情報

K. Awai, H. Ohta and N. Sato,
“Oxygenic photosynthesis without galactolipids”,
Proceedings of the National Academy of Sciences Online Edition: 2014/9/2 (Japan time), doi: 10.1073/pnas.1403708111.
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大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系

大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系 佐藤直樹研究室

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