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Research News

運動前の脳活動から反応の速さを予測することに成功

反応の早い遅いはスタート合図の前に決まっている!?

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人文社会系研究科・文学部
2016/06/09

運動を開始する前の時間帯に計測した脳活動から、反応時間のばらつき(反応の早い遅い)を予測することに成功しました。
Credit: CC BY 2.0 William Warby

スタート合図から運動開始までの反応時間のばらつきを、脳活動を用いて予測
運動を開始する前の時間帯に計測した脳活動から、反応時間のばらつき(反応の早い遅い)を予測することに成功しました。
Credit: CC BY 2.0 William Warby

東京大学大学院人文社会系研究科の大畑龍学術振興会特別研究員、今水寛教授(ATR認知機構研究所客員所長)らの研究グループは、スタート合図から運動開始までの時間のばらつき(反応の早い遅い)を、運動を開始する前の脳活動から予測できることを示しました。この成果は、ばらつきが少なく精度の高いパフォーマンスが出し続けられるようなスポーツトレーニングの開発につながることが期待されます。

ご存知のとおり、ウサイン・ボルト選手は、100メートル走において超人的な記録を出し続けています。そんな彼でも、毎回ベストのタイミングでスタートを切ることができるわけではありません。このように、いくら同じ運動を繰り返していたとしても、スタート合図に対する反応の速度にはばらつきが生じます。これまで、末梢神経と筋肉との接合部で生じる運動中の神経活動が、運動出力のばらつきを生み出す原因だと考えられてきました。近年、サルを用いた研究で、運動を準備している段階の脳活動が、ばらつきを生み出す原因の一つなのではないかという説が示唆されるようになってきたものの、人の脳活動に、ばらつきが予測できるほどの情報が反映されているのかは分かっていませんでした。

研究グループは、人の脳活動をミリ秒単位という高い時間精度で計測できる脳磁図(Magnetoencephalography: MEG)を用いて、すばやくスタートが切れる運動かスタートが遅れてしまう運動かを、運動前の脳活動から予測できることを示しました。研究グループは、機械学習のアルゴリズムを用いて、反応時間の早い、遅いを決定する特徴的な脳活動パターンを見つけ出すことで予測に成功しました。中でも、運動準備に関わる機能を有している運動前野の脳活動を利用すると、運動開始の合図が出される約0.5秒前から、その後の反応時間のばらつきを予測することができました。

今回の結果は、脳の準備状態により、その後の運動結果が大きく左右されてしまうことを示唆しています。逆に言うと、最適な準備状態となるようにトレーニングができれば、ばらつきの少ない運動パフォーマンスをコンスタントに出し続けることや、交通事故などの重大な人的ミスにつながるような反応の遅れを未然に防止することにつながる可能性が期待されます。

「プロのスプリンターは、0.01秒でも記録を縮めようと、何千回、何万回とスタートダッシュの練習を積んでいます。これは、数をこなすことがスタートのばらつきを抑える最良の方法だと考えられてきたからでしょう」と大畑研究員は話します。「今回の成果は、脳の準備状態をリアルタイムにモニタリングすることに大きく貢献するものです。このモニタリングシステムが実現すれば、より少ない練習回数でベストなスタートが切れる、効率的なスポーツトレーニング法の開発が期待されます」と続けます。

本成果は、北海道大学大学院文学研究科の小川健二准教授と共同で行われたものです。

論文情報

Ryu Ohata, Kenji Ogawa, and Hiroshi Imamizu, "Single-trial prediction of reaction time variability from MEG brain activity", Scientific Reports: 2016/06/03 (Japan time), doi:10.1038/srep27416.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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