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動くマイクロらせんで光を制御 MEMS技術を用いてテラヘルツ円偏光スイッチング素子を実現

掲載日:2016年1月15日

© 2016 Tetsuo Kan.変形可能な金属の渦巻き構造を縦横に多数配列し たメタマテリアルに光を入れると、変更状態が変化します。このとき、らせんの向きを変えることで、透過する偏光状態を右円偏光と左円偏光を切り替えることができるようになりました。

らせん構造による円偏光切り替え素子
変形可能な金属の渦巻き構造を縦横に多数配列し たメタマテリアルに光を入れると、変更状態が変化します。このとき、らせんの向きを変えることで、透過する偏光状態を右円偏光と左円偏光を切り替えることができるようになりました。
© 2016 Tetsuo Kan.

東京大学大学院情報理工学系研究科の下山勲教授、同大学院理学系研究科の五神真教授(現総長)、および同情報理工学系研究科の菅哲朗助教、同理学系研究科の小西邦昭助教らの研究グループは、波長の長いテラヘルツ光(数百ミクロン)の偏光状態を右円偏光と左円偏光に切り替えられる円偏光スイッチング素子を作製することに成功しました。

分光の際に光の電場の振動方向がそろった偏光を使えば、物質の情報を詳細に得られます。偏光状態を動的に切り替えられれば、測定精度が向上し、さらに細かな情報を得られると期待されています。しかしながら、これまではテラヘルツ光の偏光状態を切り替えられる簡便なデバイスが存在しておらず、それがテラヘルツ光の偏光を活用した技術の開発を妨げていました。

そこで、本研究グループは、直径150ミクロンの変形可能な金属の渦巻き構造を縦横に多数配列したメタマテリアルと呼ばれる人工材料を作り、テラヘルツ光の偏光状態を動的に切り替えられる光学デバイスを実現しました。渦巻きの垂直方向に力をかけると、渦巻き構造を立体化して、らせん構造をつくることができます。このとき、力を下からかけると、らせんは左巻きに、力を上からかけると、らせんは右巻きになるので、力をかける方向によってらせん方向を切り替えられました。このらせん方向の切り替えが、円偏光の左右切り替えを生みます。微小な立体らせん構造において、らせんの方向を機械的に切り替えることは難しく、これまで実現されていませんでした。

「本成果は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems 微小電気機械システム)と呼ばれる技術を用いる ことで、実現した構造です」と下山教授は話します。「物質の円偏光に対するスペクトルには分子の立体構造を知る手がかりが含まれますので、本素子は、たとえば、X線回折像の解析からは得ることが難しい物質の大きな構造に関する情報を、このように異なるアプローチで簡便に取得する技術に応用できる可能性があります。将来的には、危険薬物などの分析を現場で実行できる、コンパクトな分析機器の実現につながるかもしれません」。

プレスリリース

論文情報

Tetsuo Kan, Akihiro Isozaki, Natsuki Kanda, Natsuki Nemoto, Kuniaki Konishi, Hidetoshi Takahashi, Makoto Kuwata-Gonokami, Kiyoshi Matsumoto, Isao Shimoyama, "Enantiomeric Switching of Chiral Metamaterial for Terahertz Polarization Modulation Employing Vertically Deformable MEMS Spirals ", Nature Communications Online Edition: 2015/10/01 (Japan time), doi:10.1038/ncomms9422.
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