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電子がもつ微小な磁石の間に働く新しい相互作用 量子コンピュータにも利用可能

掲載日:2013年6月11日

電子は一つ一つが微小な磁石としての性質をもちます。例えば、物質中に無数に含まれるこの微小な磁石の向きが揃うと、物質全体が磁石としての性質を帯び、モーターやハードディスクなど様々な用途に活用することができます。私たちの目に見える世界では、二つのコンパスを近づけると、片側のコンパスのN極がもう一方のコンパスのS極に近づくように回転します。したがって、磁石は二つのコンパスを結ぶ方向に平行になろうとします。これはコンパス型の相互作用と呼ばれます。しかし、電子の持つ微小な磁石の世界では、磁石の方向は磁石の位置関係に依存しないことが知られていました。

© Kenya Ohgushi. ポストペロブスカイト型化合物CaIrO3の磁気構造。磁気モーメントは、J1と記すHeisenberg型の相互作用により反平行に、J2と記す量子コンパス型の相互作用により平行に秩序化する。

今回、東京大学物性研究所大串研也特任准教授のグループは、理化学研究所、高輝度光科学研究センターの研究者と共同で、CaIrO3という物質の中では電子の微小な磁石の間でもコンパス型の相互作用が働いていることを、明らかにしました。コンパス型の相互作用が実験的に明らかになったのは、世界で初めてのことです。理論的には、コンパス型の相互作用が働く磁石を持つ電子をうまく並べることによって、量子コンピュータ(スーパーコンピュータよりはるかに処理速度の速い次世代コンピュータ)に利用可能なスピン液体が実現することが予言されており、本研究はその実現可能性を大きく広げるものです。

プレスリリース

論文情報

Kenya Ohgushi, Jun-ichi Yamaura, Hiroyuki Ohsumi, Kunihisa Sugimoto, Soshi Takeshita, Akihisa Tokuda, Hidenori Takagi, Masaki Takata, Taka-hisa Arima,
“Resonant X-Ray Diffraction Study of the Strongly Spin-Orbit-Coupled Mott Insulator CaIrO3”,
Biomaterials Online Edition: 2013/5/25(Japan time), doi: 10.1103/PhysRevLett.110.217212.
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