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回転分子モーターV1の動きを1分子毎に観察 構造が類似するF1とは異なるユニークな回転特性が明らかに

掲載日:2013年11月21日

すべての生物は、アデノシン3リン酸(ATP)の加水分解で得られるエネルギーを用いて生命活動を維持しており、ATP加水分解酵素の仕組みの解明は生命現象の理解に重要である。ATP加水分解酵素には、V型と呼ばれる生体膜を介したイオンの濃度差を調整する膜タンパク質がある。V型ATP加水分解酵素は親水部位のV1部位と細胞膜に埋め込まれたVo部位から構成される。V1はATP加水分解のエネルギーを利用して回転するナノスケールの回転分子モーターである。V1の回転運動はこれまで、好熱菌Thermus thermophilus由来のV1(TtV1)で観察されており、その特性は構造が類似するF1(F型ATP合成酵素の親水部位)とは異なることが示されていた。V1とF1の比較は、回転分子モーターに共通な機構を理解する上で重要であるが、TtV1以外のV1の回転観察はこれまでに行われておらず、V1特有の回転特性は明らかでなかった。

© 皆川慶嘉、飯野亮太 回転分子モーターV1の1分子計測法の模式図

今回、東京大学大学院工学系研究科の飯野亮太講師、野地博行教授のグループは、大学院生の皆川慶嘉氏、学術支援職員の原舞雪氏、千葉大学の村田武士准教授、中央大学の上野博史助教らと共に、腸内連鎖球菌Enterococcus hirae由来のV1(EhV1)の回転運動を「1分子レベルで分子を直接観察する技術」によって初めて観察した。EhV1の回転特性はTtV1のそれによく似ており、F1とは異なっていた。

本成果により、V1とF1の回転特性の違いが明らかとなった。今後、V1とF1を詳細に比較することで、回転分子モーターに共通な作動機構が明らかにされると期待される。なお、本研究の成果は2013年11月8日付のJournal of Biological Chemistry誌の表紙に採用され紹介された。

プレスリリース

論文情報

Yoshihiro Minagawa, Hiroshi Ueno, Mayu Hara, Yoshiko Ishizuka-Katsura, Noboru Ohsawa, Takaho Terada, Mikako Shirouzu, Shigeyuki Yokoyama, Ichiro Yamato, Eiro Muneyuki, Hiroyuki Noji, Takeshi Murata, and Ryota Iino,
“Basic Properties of Rotary Dynamics of the Molecular Motor Enterococcus hirae V1-ATPase”,
Journal of Biological Chemistry 288 2013: 32700-32707, doi: 10.1074/jbc.M113.506329.
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