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1つの遺伝子から2種類のペプチドが同時に翻訳合成できる?! 通常の翻訳システムと独立して働く人工翻訳システムの開発

掲載日:2014年6月24日

DNAの塩基配列からタンパク質が作られる過程では、タンパク質の合成の場所となるリボソームとアミノ酸をリボソームへ運ぶ転移RNA(トランスファーRNA 、tRNA)が深く関与する翻訳反応があります。リボソームを構成するリボソーマルRNA(rRNA)とtRNAは互いの塩基が結合する相補的な3つの塩基対(図中のグアニン(G)とシトシン(C)の結合)を形成しています。これら3つの塩基対はtRNAが運んでくるアミノ酸同士をリボゾーム内で結合して、ペプチドを合成するために重要であることが示唆されていました。

通常(天然)のリボソーム・tRNAと改変リボソーム・tRNAの組み合わせを一種類のメッセンジャーRNA(mRNA)と混合する。天然のリボソーム・tRNAは天然の遺伝暗号に従って天然アミノ酸を含むペプチドを、改変リボソーム・tRNAは人工的に作った遺伝暗号に従って非天然アミノ酸を含むペプチドをそれぞれ独立に翻訳する。

© 2014 菅 裕明
通常(天然)のリボソーム・tRNAと改変リボソーム・tRNAの組み合わせを一種類のメッセンジャーRNA(mRNA)と混合する。天然のリボソーム・tRNAは天然の遺伝暗号に従って天然アミノ酸を含むペプチドを、改変リボソーム・tRNAは人工的に作った遺伝暗号に従って非天然アミノ酸を含むペプチドをそれぞれ独立に翻訳する。

東京大学大学院理学系研究科の菅裕明教授らの研究グループは、rRNAとtRNA間の結合を壊さないようrRNAとtRNAの塩基に相補的な変異を入れて、この変異によって翻訳反応がどのように変化するかを調べました。その結果、一つの変異体の組み合わせでは、通常の翻訳機構とは独立して働くシステムが機能することが分かりました。さらに、変異を加えたtRNAに通常とは異なるアミノ酸を結合して翻訳反応を進めたところ、一種類の遺伝子から二種類のペプチドを同時に作ることができました。これは、人工的に改変した遺伝暗号に従って働く改変翻訳システムの開発に成功したと言えます。

研究グループは、翻訳反応におけるrRNAとtRNAの相互作用の重要性を明らかにし、さらに遺伝暗号を改変する新しい技術の開発にも成功しました。本システムは、近年薬剤候補として注目されている、生体内のペプチドで用いられているアミノ酸以外のアミノ酸を含む特殊ペプチドの合成への応用も期待できます。

プレスリリース

論文情報

Naohiro Terasaka, Gosuke Hayashi, Takayuki Katoh & Hiroaki Suga, "An orthogonal ribosome-tRNAs pair via engineering of the peptidyl transferase center", Nature Chemical Biology Online Edition: 2014/6/9 (Japan time), doi:10.1038/NCHEMBIO.1549.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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