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大豆のタンパク質1回摂取で代謝を改善する因子が急増 抗肥満・脂質代謝改善効果の分子機構を解明

掲載日:2016年7月12日

© 2016 Ryuichiro Sato.βコングリシニンをタンパク質源とするエサを絶食後6時間後に摂取したマウス群の肝臓を用い、網羅的な遺伝子発現変動を解析した結果、FGF21の顕著な上昇を見出しました。

βコングリシンンの代謝改善効果の概要
βコングリシニンをタンパク質源とするエサを絶食後6時間後に摂取したマウス群の肝臓を用い、網羅的な遺伝子発現変動を解析した結果、FGF21の顕著な上昇を見出しました。
© 2016 Ryuichiro Sato.

東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻の佐藤隆一郎教授の研究グループは、大豆に含まれるタンパク質の約20%を占めるβコングリシニンを一度摂取すると、代謝を改善する効果のあるホルモン様因子FGF21の血中の濃度がマウスにおいて上昇することを明らかにしました。本成果は、肥満の予防や代謝の改善効果を介して生活習慣病予防に資する食品素材としてのβコングリシニンの有用性を分子レベルで示すものです。

大豆に含まれるタンパク質を定期的に毎日摂取することは、肥満を防ぐ効果があることや心臓疾患の予防にも有効であることが、これまでの研究によって明らかになっています。特に、大豆に含まれるタンパク質のうち、その約20%を占めるβコングリシニンは、このような大豆の有用な効果を担う成分として考えられ研究が進められています。しかし、その詳細な分子機構は不明でした。

今回研究グループは、絶食後のマウスにβコングリシニンが含まれるエサを一度だけ与え、摂食6時間後に肝臓での遺伝子発現を網羅的に解析しました。その結果、通常、摂食後には遺伝子発現が激減するFGF21が、βコングリシニンを摂取すると増加し、血中の濃度も急上昇すると言う驚くべき応答を見出しました。通常、エサに含まれる成分の作用は週単位の長期的な投与によって、その効果が検出されます。

このFGF21の増加には、ATF4と呼ばれるDNAに結合するタンパク質(転写因子)の活性化が必須であり、βコングリシニンの摂取によって消化管から肝臓門脈血液中のメチオニンの濃度が低下することが重要な要因であることを見出しました。また、FGF21を欠損しているマウス群に長期間βコングリシニンが含まれた高脂肪食を投与すると、FGF21を有している普通のマウス群で見られる抗肥満・代謝改善効果の多くは失われました。

「エサの成分が有効か否かは、ふつう、数週間エサを投与した後に実験を行うことでその効果が明らかにされます。」と佐藤教授は話します。「1回摂取しただけで劇的な効果が見られるのは予想を遥かに超えた出来事でした。さらに、私たちが見出したFGF21はその機能が近年明らかにされ、優れた代謝改善効果を有する血液成分として注目を集めています。大豆に含まれるタンパク質にこのような効果が隠れていたのには驚きました。機能性食品の成分として有効な活用が可能です」と今後の展開に期待を寄せています。

プレスリリース

論文情報

Tsutomu Hashidume, Asuka Kato, Tomohiro Tanaka, Shoko Miyoshi, Nobuyuki Itoh, Rieko Nakata, Hiroyasu Inoue, Akira Oikawa, Yuji Nakai, Makoto Shimizu, Jun Inoue and Ryuichiro Sato, "Single ingestion of soy β-conglycinin induces increased postprandial circulating FGF21 levels exerting beneficial health effects", Scientific Reports Online Edition: 2016/06/17 (Japan time), doi:10.1038/srep28183.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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