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固体物理学における四半世紀の謎を解明 URu2Si2におけるrank-5秩序の発現

掲載日:2012年6月14日

本研究で明らかにされた隠れた秩序をもつ状態の模式図 ©池田浩章

相転移は物性物理学における中心的なテーマのうちのひとつである。教科書には磁性や超伝導といった様々な相転移に関する記述が見い出せる。磁気転移においては物質中のスピンが様々なパターンを形成し、超伝導転移においては電子がクーパーペアと呼ばれる対を形成する。このような相転移を記述する為に、秩序変数とよばれるパラメータを導入するが、一般に、与えられた相転移に対し秩序変数が何かを実験的に同定することは難しいことではない。1985年、URu2Si2という物質が温度17.5Kにおいて相転移を起こすことが発見された。以来、この相転移機構を解明する為に多くの研究がなされてきたが、何が秩序変数なのかという問題が25年来の謎として残っていた。京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻の池田浩章助教、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の有田亮太郎准教授、独立行政法人日本 原子力研究開発機構の鈴木通人研究員、韓国APCTPの瀧本哲也グループリーダー、京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻の芝内孝禎准 教授、松田祐司教授らは共同で、この隠れた秩序に対して微視的な研究を行った。非経験的な電子状態計算から出発し、考えられるすべての秩序変数に対し、その応答関数を定量的に計算した。一般に、ウランのような重い電子におけるf電子は大きな軌道運動量を持っており、多極子秩序とよばれるユニークな秩序を持つこと考えられる。実際、今回の計算で、彼らはrank-5の多極子の可能性が最も高いことを示した。この研究成果は、物質における相転移現象について新しい知見を与えるものと期待される。

プレスリリース

論文情報

H. Ikeda, M-T. Suzuki, R. Arita, T. Takimoto, T. Shibauchi, Y. Matsuda,
“Emergent rank-5 nematic order in URu2Si2″,
Nature Physics Advance online publication: [2012]/[6]/[4] (Japan time), doi: 10.10138/nphys2326.
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