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Research News

ビスマスがトポロジカル物質であることを解明

電子波干渉効果を用いた超精密電子状態マッピング

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物性研究所
2017/04/06

© 2017 松田巌光電子分光で観測されたビスマスの電子状態を、電子の波のエネルギーと波数(波長の逆数)の関係で示している。信号強度の強い領域が黒で示されている。膜の厚みを原子層単位で連続的に変化させることで、電子の波の干渉模様が変化する様子が観測されている。

光電子分光で観測された電子の波の干渉模様
光電子分光で観測されたビスマスの電子状態を、電子の波のエネルギーと波数(波長の逆数)の関係で示している。信号強度の強い領域が黒で示されている。膜の厚みを原子層単位で連続的に変化させることで、電子の波の干渉模様が変化する様子が観測されている。
© 2017 松田巌

東京大学物性研究所の松田巌准教授らの研究グループは、お茶の水女子大学、広島大学、および台湾のグループと共同で、物質中の電子の状態を直接観測できる手法(光電子分光)と、電子の波の干渉波形を描き出す独自の手法を組み合わせて、半金属ビスマスの結晶がトポロジカル物質であることを解明しました。ビスマスの性質が明らかになったことにより、次世代の情報技術への応用が加速すると期待されます。

金属にも非金属にも似た性質を示す半金属の代表的な物質としてビスマスが知られています。ビスマスは、質量がほぼゼロのディラック電子を持つなど、興味深い性質を示す物質です。さらに近年は、トポロジカル物質と呼ばれる新しい物質群を構成する中心的な元素としても注目を集めています。

物質中の電子は固有の波長とエネルギーを持った「電子波」として振る舞い、このエネルギーと波長の関係(バンド構造)が物質の性質を特徴づけます。トポロジカル物質はバンド構造の幾何学的な性質(トポロジー)が通常の物質に対して反転した物質です。この結果、表面のみで電気が流れるなどの特徴的な性質を示し、次世代の情報技術への応用が期待されています。トポロジカル物質は一般に光電子分光法により電子構造(バンド構造)を観測することで確認できますが、従来の測定限界ではディラック電子のような複雑なものを精密に決定することが難しかったため、ビスマスそれ自体がトポロジカル物質であるかどうかは長らく議論がありました。

今回、共同研究グループは、本来3次元的な物質であるビスマスの結晶を極めて薄い2次元的な膜に加工して、膜の厚みを連続的に変化させながら光電子分光測定を行うことで、測定限界の問題を解決し、これまでの議論に決着をつけました。原子の大きさにまで薄くした膜の中では、閉じ込められた電子の波が作る干渉波形が直接見えるようになります。光電子分光における測定限界の問題は3次元的な性質に対して強く影響しますが、2次元的な膜の中の電子波は遥かに精密に測定できる事情があります。共同研究グループはさらに、この2次元的な干渉波形が3次元の情報を保持していることに着目し、膜の厚みを変えながら干渉の様子を調べていくことで、非常に高い精度でビスマスの3次元的なバンド構造を抽出することに成功しました。

「ビスマスのトポロジーの問題は長らく解決が困難だとされてきましたが、私達が培ってきた電子波干渉効果の手法が驚くほど効果的に働き、ついにトポロジカル物質であることを解明できました。今回の成果は、研究室の学生の努力の結晶です」と松田准教授は話します。「今回用いた手法は他の様々な物質に応用できます。現在でも次々と新しい機能を持ったトポロジカル物質が提案されていますが、これらの多くはビスマスと同じように複雑な電子構造を持っており、高い分解能での測定が欠かせません。私達が用いた手法は、超精密な測定手法の1つとして今後の物質研究で活用されていくでしょう」と期待を寄せます。

 

プレスリリース [PDF]

論文情報

S. Ito, B. Feng, M. Arita, A. Takayama, R.-Y. Liu, T. Someya, W.-C. Chen, T. Iimori, H. Namatame, M. Taniguchi, C.-M. Cheng, S.-J. Tang, F. Komori, K. Kobayashi, T.-C. Chiang and I. Matsuda, "Proving Nontrivial Topology of Pure Bismuth by Quantum Confinement", Physical Review Letters Online Edition: 2016/12/02 (Japan time), doi:10.1103/PhysRevLett.117.236402.
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物性研究所 松田巌研究室

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