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Research News

半世紀に渡るコバルト酸化物の謎を解き明かす

世界最強クラスの超強磁場で見つかった新たな電子・磁気状態

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物性研究所
2016/06/22

© 2016 Akihiko Ikeda.低温・低磁場領域ではすべてのコバルトイオンが低スピン状態にあります。温度が上がると、中間スピンもしくは高スピン状態がランダムに占有され始めます。100テスラ以上の強磁場をかけると、中間スピン・高スピンの数が増え、空間的にも整列すると考えられます(右上)。このとき、中間スピン・高スピン状態に付随する軌道状態が整列すると予想されます。さらに温度を下げると、別の空間的整列パターンを持つスピン状態・軌道状態が実現する可能性があります(右下)。

今回解明されたコバルト酸化物(LaCoO3)の磁場温度相図と、各相におけるスピン状態配列の予想模式図
低温・低磁場領域ではすべてのコバルトイオンが低スピン状態にあります。温度が上がると、中間スピンもしくは高スピン状態がランダムに占有され始めます。100テスラ以上の強磁場をかけると、中間スピン・高スピンの数が増え、空間的にも整列すると考えられます(右上)。このとき、中間スピン・高スピン状態に付随する軌道状態が整列すると予想されます。さらに温度を下げると、別の空間的整列パターンを持つスピン状態・軌道状態が実現する可能性があります(右下)。
© 2016 Akihiko Ikeda.

東京大学物性研究所の池田暁彦助教、松田康弘准教授、茨城高等専門学校の佐藤桂輔准教授らの研究グループは、世界最強クラスの磁場を用いて、コバルト酸化物の新しい電子・磁気状態である「スピン状態秩序相」を発見しました。本成果はコバルト酸化物の基本的な性質を明らかにするもので、今後の微小なスイッチなどのデバイスの開発に大きく役立つと期待されます。

コバルトのような遷移金属の酸化物には、電子が複数の状態を示すことのできる性質(自由度)として電荷(正負)やスピン(上下)が存在します。これらの自由度が強く相関し合うことで、酸化物が多彩な性質を示すようになるため大変注目されています。コバルト酸化物中には「スピン状態」というユニークな自由度がありますが、その協同的な運動には未解明な点が多く、この謎は固体物理最大の難問の一つとされ、その解明に半世紀に渡る挑戦が続けられていました。

今回、研究グループでは、コバルト酸化物で「スピン状態」が空間的に整列した「スピン状態秩序相」が超強磁場領域に広がっていることを明らかにしました。これは、100テスラ以上という世界最強クラスの磁場を発生できる装置を用いることで得られた成果で、100テスラとは最強の永久磁石であるネオジウム磁石が発生する磁場の約100倍程の磁場です。

「前人未踏の測定領域で研究することの醍醐味は、よく知られた物質や現象を対象としても新しい発見が期待できるところです。研究をはじめた時は手探りでなかなか面白い現象を発見できませんでしたが、あるとき、普通は温度を下げると新しい現象が見つかることが多いですが、逆に温度を上げて測定したらどうだろう?と思いつきました」と池田助教は話します。「すると、半世紀も知られていなかった新しい電子・磁気状態を発見しました。今回発見した「スピン状態秩序相」には未だ不明な点が多いので、今後さらなる未踏測定領域にチャレンジし、その本質を明らかにしたいと思っています」と続けます。

本成果は米国科学誌「Physical Review B (Rapid Communication)」のオンライン版(6月6日)で公開されました。また、同誌のEditors’ Suggestion(注目論文)にも選出されました。

プレスリリース [PDF]

論文情報

A. Ikeda, T. Nomura, Y. H. Matsuda, A. Matsuo, K. Kindo, K. Sato, "Spin state ordering of strongly correlation LaCoO3 at ultrahigh magnetic fields", Physical Review B (Rapid Communication) Online Edition: 2016/06/06  (Japan time), doi:10.1103/PhysRevB.93.220401.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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