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Research News

メスなのに精子をつくるカイコの作出に成功

カイコを雄にする遺伝子の機能を解明

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新領域創成科学研究科
農学生命科学研究科・農学部
2016/11/02

© 2016 鈴木 雅京A. Masc-R遺伝子をもつ雌カイコの卵巣には、精巣によく似た組織がみられた(左写真)。拡大すると、精巣に特有の小胞が無数にみられ(中央写真)、この精巣によく似た組織の中には、たくさんの細長い形状の塊(精子束)がみられた(右写真矢印)。B. 正常な雄カイコの精巣(左写真)は4つの部屋からなり、それぞれの部屋には精子を含む小胞がみられる(中央写真)。精巣には精子束が無数にみられ(右写真)、これら精子束の1つ1つには数百の精子が含まれる。C. 正常な雌カイコの卵巣は4本の細長い管からなる(写真)。

雌なのに精子を作るカイコ
A. Masc-R遺伝子をもつ雌カイコの卵巣には、精巣によく似た組織がみられた(左写真)。拡大すると、精巣に特有の小胞が無数にみられ(中央写真)、この精巣によく似た組織の中には、たくさんの細長い形状の塊(精子束)がみられた(右写真矢印)。B. 正常な雄カイコの精巣(左写真)は4つの部屋からなり、それぞれの部屋には精子を含む小胞がみられる(中央写真)。精巣には精子束が無数にみられ(右写真)、これら精子束の1つ1つには数百の精子が含まれる。C. 正常な雌カイコの卵巣は4本の細長い管からなる(写真)。
© 2016 鈴木 雅京

東京大学大学院新領域創成科学研究科の鈴木雅京准教授らの共同研究グループは、カイコの性別を雄へと導く働きがあると予想されていた遺伝子(Masc)を雌のカイコの遺伝子に組込んだ結果、精子を作るなど様々な点で雄らしさを備えることを発見しました。Masc遺伝子を標的とした農薬の開発によって、蛾類害虫を不妊化する害虫防除法に役立つと期待されます。

カイコの性別は、piRNAと呼ばれる小さなRNAによって決まる、という点で特徴的です。このpiRNAは雌だけがもつW染色体の遺伝子Femによって作りだされ、個体の性別を雄にする遺伝子Mascの働きを抑えます。したがってFem遺伝子をもつカイコでは雄へと導くこと(雄化)が抑えられ、その結果、カイコは雌になると予想されてきました。しかし、Masc遺伝子がカイコを雄化することができるかどうか、という点については不明のままでした。

そこで共同研究グループは、piRNAによる抑制を免れるMascMasc-R)遺伝子を人工的に作製し、それを雌のカイコのゲノム内に組込むことでどのような変化が見られるかを観察しました。その結果、Masc-R遺伝子をもつ雌のカイコは卵巣に異常を示し、ほとんど卵を産まなくなりました。また、この異常な卵巣の中には精巣とよく似た組織の形成がみられるほか、この組織には実際に精子が含まれることもわかりました。また、外部の生殖器や腹部の特徴についても雄化の傾向がみられました。

以上の結果から、共同研究グループは、Masc遺伝子はカイコの雄化を引き起こす機能をもつと結論付けました。カイコの雄化の機能をもつ遺伝子は、未だ数えるほどしかみつかっていません。本研究は、蝶や蛾の雄化に関わる遺伝子の機能を解明した、貴重な例であるといえます。

鈴木雅京准教授は次のように話します。「カイコの性別を決める生物学的な機構はとてもユニークです。Masc遺伝子もこれまで雄化の機能をもつことが知られるいかなる遺伝子とも異なる新しい種類のものでした」。そして、「正直なところ、Masc遺伝子がカイコを雄化する機能をもつかどうか不安でしたが、今回の研究によってその不安が払拭されてほっとしています。Masc遺伝子はそれくらい珍しい遺伝子なのです」と続けます。

本成果は、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門 新産業開拓研究領域 カイコ機能改変技術研究ユニットの笠嶋めぐみ研究員ら、東京大学大学院農学生命科学研究科の勝間進准教授らとの共同研究により得られたものです。

論文情報

Hiroki Sakai, Megumi Sumitani, Yasuhiko Chikami, Kensuke Yahata, Keiro Uchino, Takashi Kiuchi, Susumu Katsuma, Fugaku Aoki, Hideki Sezutsu and Masataka G. Suzuki, "Transgenic Expression of the piRNA-Resistant Masculinizer Gene Induces Female-Specific Lethality and Partial Female-to-Male Sex Reversal in the Silkworm, Bombyx mori", PLOS Genetics Online Edition: 2016/08/31 (Japan time), doi:10.1371/journal.pgen.1006203.
論文へのリンク(掲載誌

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