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Research News

細胞内「ロジックボード」分子の発見

複数のシグナル入力を適切な細胞出力へと変換する仕組み

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医学系研究科・医学部
2016/11/11

© 2016 畠山 昌則ParafibrominはWntシグナルとHedgehogシグナルの転写共役因子(それぞれ赤色と青色)に対してはどちらか一方のみと競合的に結合します。これにより細胞内では2つのシグナルの標的遺伝子群のうちどちらか一方のみが転写されます。一方、Notchシグナルの転写共役因子(緑色)は他の分子と同時にparafibrominに結合するため、協調的なシグナル標的遺伝子群の誘導が引き起こされます。

Parafibrominによって細胞内のシグナルが統合される仕組み
ParafibrominはWntシグナルとHedgehogシグナルの転写共役因子(それぞれ赤色と青色)に対してはどちらか一方のみと競合的に結合します。これにより細胞内では2つのシグナルの標的遺伝子群のうちどちらか一方のみが転写されます。一方、Notchシグナルの転写共役因子(緑色)は他の分子と同時にparafibrominに結合するため、協調的なシグナル標的遺伝子群の誘導が引き起こされます。
© 2016 畠山 昌則

東京大学大学院医学系研究科の畠山昌則教授、菊地逸平特任研究員らの研究グループは、parafibromin(パラフィブロミン)とよばれるタンパク質が細胞外から入力される複数の異なる情報(シグナル)を細胞内で統合し適切な出力(細胞応答)へと変換する役割を担うことを発見しました。本研究の成果は、細胞内シグナルの統合の不調により生じるがんや先天的な形態の異常に対する治療法や予防法の開発につながることが期待されます。

細胞は外部から受けるさまざまな刺激に反応して多彩な細胞内の情報伝達経路を活性化します。そして、細胞分裂、細胞分化あるいは細胞死など、状況に適して反応します。細胞内に加えて細胞間の情報伝達が重要となる多細胞生物では、その組織等の形や位置を決める「形態形成シグナル」とよばれる情報伝達経路群が個体の発生や維持に重要な働きをもっています。しかしながら、「1個の細胞が2種類以上の異なる形態形成シグナルを同時に受け取った場合、複数のシグナルは細胞の中でどのような仕組みにより統合的に処理され、状況に応じた適切な反応を発揮するのか?」という疑問は、謎のまま残されていました。

研究グループは、3つの主要な形態形成にかかわるシグナル(Wntシグナル、Hedgehogシグナル、Notchシグナル)を細胞が受け取ると、その情報を細胞内で伝えるタンパク質(転写共役因子)と細胞の核内に存在するparafibrominと呼ばれるタンパク質とが選択的(競合的あるいは協調的)に結合して、複合体を作り、細胞の状況に応じて適切な遺伝子を発現させることを明らかにしました。このことから、parafibrominは細胞が受け取った複数の異なる入力シグナルを細胞内で統合し、適切な出力(転写誘導)へと変換するコンピューターの「ロジックボード」に相当する機能を持つ分子であると結論づけられました。

「細胞内シグナル統合の破綻は人でもがんや先天的な奇形の原因となります」と畠山教授は話します。「今回の成果はこうした病気に対する新しい治療法や予防法の開発につながれば」と今後の展開に期待を寄せます。

プレスリリース

論文情報

Ippei Kikuchi, Atsushi Takahashi-Kanemitsu, Natsuki Sakiyama, Chao Tang, Pei-Jung Tang, Saori Noda, Kazuki Nakao, Hidetoshi Kassai, Toshiro Sato, Atsu Aiba, Masanori Hatakeyama, "Dephosphorylated parafibromin is a transcriptional coactivator of the Wnt/Hedgehog/Notch pathways", Nature Communications Online Edition: 2016/09/21 (Japan time), doi:10.1038/NCOMMS12887.
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