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謎の「高速電波バースト」までの距離の解明にすばる望遠鏡が貢献 本当に50億光年の彼方からやってきていた!

掲載日:2016年4月7日

© The University of Tokyo.この銀河は楕円銀河と呼ばれる種類で、色が赤く、古い星の集まりです。距離は約50億光年と測定されました。

すばる望遠鏡によって発見された高速電波バーストの母銀河
この銀河は楕円銀河と呼ばれる種類で、色が赤く、古い星の集まりです。距離は約50億光年と測定されました。
© The University of Tokyo.

東京大学大学院理学系研究科の戸谷友則教授らは国際研究グループの一員として、高速電波バーストと呼ばれる謎のフラッシュ現象をすばる望遠鏡で観測し、初めてこの天体が50億光年という宇宙論的な遠距離にあることを証明しました。この現象の正体が今後の研究で明らかになっていくことが期待されます。

電波望遠鏡で夜空を観測していると、継続時間がわずかに数ミリ秒という極めて短い、「高速電波バースト」という謎のフラッシュ現象が起きます。この現象は9年前に発見されたばかりで、観測された電波の特徴から、パルサー(強磁場を持って回転し、 周期的に電波を放っている中性子星)などの銀河系内の既知天体ではなく、銀河系外、しかも50~100億光年という宇宙論的な遠距離からやってきていることが示唆されていました。しかし、直接的な距離測定はこれまで全く例が無く、実は天体現象などではなく地球大気における発光現象ではないかという主張すらありました。

今回、東京大学や国立天文台などの日本チームは、オーストラリアのパークス電波天文台が発見した高速電波バーストについてすばる望遠鏡で追観測を行い、初めて高速電波バーストが発生した遠方の銀河を突き止め、その距離が50億光年という遠距離であることを証明しました。これにより、高速電波バーストは本当に宇宙論的遠距離にある巨大な爆発現象であることを明らかにしました。その銀河は楕円銀河という古い星の集まりであったため、高速電波バーストは、連星中性子星の合体などがその起源として有力になりました。

「今回の観測結果は宇宙論上の問題にも光を当てています。宇宙の元素などの既知の物質の存在量は標準宇宙モデルによって理論的に予想されていますが、そのうち銀河に取り込まれて星になっているものは10%もありません。残りの90%以上は、銀河間空間に薄いガスとして存在すると考えられてきましたが、観測的な検証はありませんでした」と戸谷教授は話します。「電波は、伝搬中に物質中を通るとその量に応じて到着時間が遅れます。これを用いて銀河間物質の密度を求めたところ、標準宇宙論の予言と一致したのです。これにより、宇宙における全元素の存在場所が明らかになりました」と続けます。

プレスリリース

論文情報

E.F. Keane et al., "The host galaxy of a fast radio burst", Nature 530, 453-456, (2016)
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