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Research News

生体のように方向性を持って自律運動する高分子表面

生体模倣材料の新しい設計指針として期待

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工学系研究科・工学部
2017/02/24

© 2017 Ryo Yoshida.図中の赤色の領域がBZ反応を促す、金属触媒Ru(bpy)3の還元状態 (水となじみにくい疎水性/膜の厚さが減少)、緑色の領域がRu(bpy)3の酸化状態 (水となじみやすい親水性/膜の厚さが増加) に対応する。化学反応が表面上を伝わっていくのに伴い、物性や形態が変化した領域が界面を移動する。 今回の傾斜構造を導入した界面では、傾斜方向に沿った運動が観察された。

傾斜構造を導入し、自励振動高分子によって修飾された界面の概念図
図中の赤色の領域がBZ反応を促す、金属触媒Ru(bpy)3の還元状態 (水となじみにくい疎水性/膜の厚さが減少)、緑色の領域がRu(bpy)3の酸化状態 (水となじみやすい親水性/膜の厚さが増加) に対応する。化学反応が表面上を伝わっていくのに伴い、物性や形態が変化した領域が界面を移動する。 今回の傾斜構造を導入した界面では、傾斜方向に沿った運動が観察された。
© 2017 Ryo Yoshida.

東京大学大学院工学系研究科の吉田亮教授らの研究グループは、高分子から成るナノサイズの表面や界面に、生体内の輸送や運動にかかわるモータータンパク質のような自律的かつ方向性を持った運動機能をもたせることに成功しました。本成果は、微小な物質を自律的に輸送するシステムなど、新しいナノマシンや生体の機能を模倣できる材料としての展開が期待されます。

近年、高分子などやわらかい材料から構成される表面や界面(ソフト界面)は、その化学的、物理的な特性によって特定の機能を発揮する、機能性材料として大きな注目を集めています。特に、刺激に対して応答する高分子(刺激性応答性高分子)の表面を修飾することで、温度、光、pH等の変化に応答して形態や物性の変化を起こす、動的なソフト界面の設計も可能になってきました。これらは機能を発揮するために、外界からの刺激が必須となります。一方で、生体のモータータンパク質のように外界からの刺激がなくとも自律的に機能を発揮するソフト界面が設計できれば、新しいナノマシンなど、これまでにない全く新しい応用の展開が期待されます。

研究グループは生体内の代謝回路の人工的なモデルとして知られるベロウソフ・ジャボチンスキー反応(BZ反応)を高分子材料内で引き起こすことで、一定の条件で周期的に運動(心臓のような拍動)する自励振動(じれいしんどう)高分子を開発しており、今回、この高分子を用いて自律的な変化が起こるソフト界面を設計しました。さらに、研究グループは、膜の厚さを一方向に連続的に傾斜させた表面を設計することで、高分子の運動の駆動力となるBZ反応が周期的な波として伝わる方向を制御することに成功しました。

外部からの刺激がなくても膨らんだり、しぼんだりを繰り返す高分子材料は世界的にも新しい研究です」と吉田教授は話します。「膨張や収縮を繰り返す特性に加えて、構成高分子鎖自体が互いに作用して生まれる運動や特有の振る舞いこそが重要であり、そこに生命現象とも共通した魅力を、今回私たちが開発したシステムに感じます」と続けます。

「一定の条件で自律的な機能を発現する、局所的な物性変化が起こり、その領域が伝播するといった特徴は他の機能性表面にはないユニークな機能です」と増田造大学院生は説明します。「今回、ナノサイズの傾斜を導入することでその運動性を制御することに成功しました」と続けます。

本成果は東京女子医科大学 先端生命医科学研究所の岡野光夫 特任教授らとの共同研究により得られたものです。

論文情報

Tsukuru Masuda, Aya Mizutani Akimoto, Kenichi Nagase, Teruo Okano, Ryo Yoshida, "Artificial cilia as autonomous nanoactuators: Design of a gradient self-oscillating polymer brush with controlled unidirectional motion", Science Advances Online Edition: 2016/09/01 (Japan time), doi:10.1126/sciadv.1600902.
論文へのリンク(掲載誌

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