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腸は体のストレスセンサー ストレスを腸が関知して体を健常に保つ仕組みを解明

掲載日:2013年5月13日

私たちの体が健常な状態を維持できるのは、常に受ける様々なストレスに個体が巧みに応答しているからです。組織が傷害を受けると、炎症を含む全身性のストレスが体に生じます。

© Masayuki Miura. 腸上皮では、腸から離れた組織である表皮の創傷によって、カスパーゼの活性化と細胞死がおきる。L: 管腔、BM: 基底膜、青色:核染色、マゼンタ:カスパーゼが活性化した細胞

東京大学大学院薬学系研究科の三浦正幸教授、武石明佳研究員らは、理化学研究所の倉永英里奈チームリーダーと共同で、創傷ストレスに応答して体を健常に保つ仕組みとして、腸による全身性ストレスの受容とそれに引き続く腸幹細胞の活性化による細胞の再生が重要であることを解明しました。

ショウジョウバエを使った今回の成果により、外界からのストレスを腸が感知してストレス応答し、ストレスセンサーとしての役割を果たした腸上皮細胞は速やかに細胞死をおこすこと、その際に幹細胞の増殖を促して、細胞数に過不足のない腸上皮再生と個体の生存を維持していることが示されました。傷害部位から離れた場所の幹細胞が活性化して再生を促すこの仕組みは、脳虚血後に成体脳にある幹細胞が活性化され、脳の修復が促される現象とも似通っています。

今回、全身性ストレスの応答によって組織幹細胞の活性化を促すことが、健常な体の恒常性維持に重要であることが初めて明らかになりました。この発見を糸口に、全身性ストレス応答と幹細胞活性化をつなぐ分子メカニズムの遺伝学的な解明が期待されます。

プレスリリース

論文情報

Takeishi, A., Kuranaga, E., Tonoki, A., Misaki, K., Yonemura, S., Kanuka, H., Miura, M.,
“Homeostatic epithelial renewal in the gut is required to dampen a fatal systemic wound response in Drosophila”,
Cell Reports 3, 919-930, 2013, doi: 10.1016/j.celrep.2013.02.022.
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