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宇宙で最強な磁石天体が、磁力でわずかに変形している兆候を発見 「すざく」衛星でマグネターの首振り運動を検出

掲載日:2014年6月16日

中性子星は、宇宙で最も高密度な天体であり、そのほとんどが中性子で構成されている。中性子星は、太陽程度の質量をもちながら半径はわずか 10 kmで、その表面での重力は、ブラックホールを除くと宇宙最強である。一般に強い磁場をもつ中性子星の中でも、特に磁場の強いものは「マグネター」と呼ばれ、磁気エネルギーを消費してX線を放射すると考えられている。

グネターの磁場の模式図。紺色は外部に出る双極子磁場、赤は内部に隠れているトロイダル磁場。赤い磁力線は星を赤道方向に縮め、紺色の磁力線は広げる力を及ぼす。観測から示唆される軟X線放射域を緑、硬X線放射域をオレンジで示す。

© 2014 中野俊男、牧島一夫
マグネターの磁場の模式図。紺色は外部に出る双極子磁場、赤は内部に隠れているトロイダル磁場。赤い磁力線は星を赤道方向に縮め、紺色の磁力線は広げる力を及ぼす。観測から示唆される軟X線放射域を緑、硬X線放射域をオレンジで示す。

東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 牧島一夫 教授らと理化学研究所の研究グループ(NASAに所属する研究者1名を含む)は、JAXAのX線衛星「すざく」を用い、4U 0142+61 と呼ばれるマグネターを観測したところ、低エネルギーのX線(軟X線)では中性子星の回転に伴うパルスが8.69秒の一定周期で検出できたのに対し、高エネルギーX線(硬X線)ではパルスの到着時刻が、約15時間かけて0.7秒ほど進み遅れしていることを発見した。これはこの天体が球形から0.01%ほど対称軸に沿って細長いレモン型に変形し、そのため天体の対称軸が首振り運動(自由歳差運動)をする結果と結論付けた。軟X線は軸の近くから発生しているためパルス間隔が一定であるのに対し、硬X線は少し外れた場所で放射されるため、首振りに伴いパルス間隔がふらつくと解釈できる。強い重力にもかかわらず、このように変形が生じるのは、星の内部に潜む強い磁場の磁力による可能性が高い。変形量を説明するのに必要な内部磁場の強度は1012テスラ(T)と、考えうる極限に近い値であった。中性子星の内部に潜む磁場が観測から推定されたのは、これが世界で最初である。

プレスリリース

論文情報

Makishima, K., Enoto, T., Hiraga, J. S., Nakano, T., Nakazawa, K., Sakurai, S., Sasano, M., and Murakami, H.,
“Possible Evidence for Free Precession of a Strongly Magnetized Neutron Star in the Magnetar 4U 0142+61”,
Physical Review Letters Vol. 112, Issue 17, id.171102 (2014), 2014/04/30 (Japan time), doi: 10.1103/Phys RevLett.112.171102
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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