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Research News

やはりカメはウサギに勝る

反応の「速さ」ではなく基質を掴み続ける「ねばり強さ」が結晶性セルロースの分解に重要

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農学生命科学研究科・農学部
2014/03/20

セルロースは植物細胞の細胞壁を構成する主な成分で、地球上に最も多く存在するバイオマスです。しかし、セルロースは結晶性が高く、分解されにくいという性質があるため、アルコール類や有機酸への変換を困難にしています。自然界では、糸状菌(キノコやカビ)が結晶化したセルロース(結晶性セルロース)を分解することのできるトンネル状の構造をもつ酵素(セルラーゼ)を作り、結晶性セルロースをエネルギー源として利用していることを考えると、その仕組みを明らかにすることができれば、セルロースを有効に使用できる可能性があります。

© 鮫島正浩、五十嵐圭日子
(上図)トンネル構造の長いカビ由来セルラーゼ(TrCel7A)とトンネル構造が短いキノコ由来セルラーゼ(PcCel7CおよびPcCel7D)について、結晶性セルロース表面での反応速度(速さ)とプロセッシビティ(粘り強さ)を比較した。(下図)結晶性セルロースを分解する活性を生化学的に比較したところ、プロセッシビティの高い酵素ほど効率的に結晶性セルロースを分解することが分かった。

今回、東京大学大学院農学生命科学研究科生物材料科学専攻の鮫島正浩教授と五十嵐圭日子准教授、中村彰彦大学院生(博士課程3年)の研究グループおよび金沢大学の研究グループは結晶性セルロースを分解できる糸状菌由来の3種類のセルラーゼのセルロース上での働きを高速原子間力顕微鏡により1分子ずつ直接観察し、それらの活性を生化学的結果と比較しました。その結果、まるでイソップ童話の「ウサギとカメ」のように、結晶性セルロースを分解するために必要な酵素の性質は酵素1分子の‘速さ’ではなく、一度反応を開始したらどれだけ多くの回数セルロース鎖を分解できるかという‘粘り強さ’であることを明らかにしました。これは結晶性セルロースにおいてはセルラーゼが反応開始できる箇所が限られているため、いかに反応を始めるかが系全体の効率を決めていることが原因と示唆されます。

本研究の成果はセルロースを有用な有機資源に変換するために、より効率的な酵素をデザインできるようになると期待されます。

論文情報

Akihiko Nakamura, Hiroki Watanabe, Takuya Ishida, Takayuki Uchihashi, Masahisa Wada, Toshio Ando, Kiyohiko Igarashi and Masahiro Samejima,
“Trade-off between processivity and hydrolytic velocity of cellobiohydrolases at the surface of crystalline cellulose”,
The Journal of the American Chemical Society Online Edition: 2014/2/26, doi: 10.1021/ja4119994.
論文へのリンク

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大学院農学生命科学研究科

大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻

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