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根に寄生する「魔女の雑草」の発芽を誘導する仕組みの解明に向けて 特定の発芽誘導物と結合する寄生雑草に由来したタンパク質の構造

掲載日:2016年9月27日

© 2016 田之倉 優ShKAI2iBタンパク質の中でカリキンを囲んでいるアミノ酸残基は青色で表示しています。この青色で囲んだ領域はカリキンがちょうど収まるサイズであり、カリキンよりも分子サイズの大きなストリゴラクトン(GR24)を受け入れることができません。

ShKAI2iBとカリキン(KAR1)が結合している様子
ShKAI2iBタンパク質の中でカリキンを囲んでいるアミノ酸残基は青色で表示しています。この青色で囲んだ領域はカリキンがちょうど収まるサイズであり、カリキンよりも分子サイズの大きなストリゴラクトン(GR24)を受け入れることができません。
© 2016 田之倉 優

東京大学大学院農学生命科学研究科の田之倉優教授と浅見忠男教授らの研究グループは、他の植物の根に寄生し栄養分を吸収して生育する植物(根寄生雑草)ストライガに由来するKAI2タンパク質が発芽を誘導する物質のカリキンにのみ結合する機構とその構造基盤を解明しました。本成果は、アフリカなどの農業生産に甚大な被害を与えている根寄生雑草の発芽制御につながると期待されます。

「魔女の雑草」とも呼ばれているストライガは、サハラより南のアフリカの農地に広く生息しており、重要な穀物に寄生し、甚大な被害を及ぼす根に寄生する雑草の一種です。ソルガム、トウモロコシ、イネなどの植物の根から分泌されたタンパク質のストリゴラクトンをKAI2タンパク質が感受して発芽すると考えられています。ストライガには複数のKAI2タンパク質が存在し、カリキンまたはストリゴラクトンに対する反応が異なります。

今回、研究グループはストライガのKAI2タンパク質の一つであるShKAI2iBがカリキンのみと結合することを明らかにしました。さらに、X線結晶構造解析法を駆使してShKAI2iBとカリキンが結合している状態の構造を解明しました。これにより、カリキンのみと結合するための構造が明らかになり、ストライガのKAI2タンパク質の多様性を分子レベルで説明することに成功しました。ShKAI2iBはカリキンなどのKAI2タンパク質と結合するための結合領域が狭くなっていたため、ShKAI2iBはカリキンよりも分子サイズの大きなストリゴラクトンを受け入れることができなくなり、ストリゴラクトンと結合できないことがわかりました。

今回の研究は、ストライガの多様なKAI2タンパク質が植物の発芽を誘導する物質とどのように結合するか、という機構の一端を明らかにしたもので、根寄生雑草の発芽を制御する化合物の開発に役立つことが期待されます。

「私たちは今回、根寄生雑草ストライガの発芽に関わるタンパク質の一つが特定の発芽誘導物と結合する構造基盤を明らかにしました」と田之倉優教授は話します。「この研究成果をきっかけにし、ストライガの発芽を誘導もしくは阻害するような化合物の開発につながることを期待しています」と続けます。

プレスリリース

論文情報

Yuqun Xu, Takuya Miyakawa, Hidemitsu Nakamura, Akira Nakamura, Yusaku Imamura, Tadao Asami and Masaru Tanokura, "Structural basis of unique ligand specificity of KAI2-like protein from parasitic weed Striga hermonthica", Scientific Reports Online Edition: 2016/08/10 (Japan time), doi:10.1038/srep31386.
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