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転移RNAの成熟を助ける意外な方法

出芽酵母のtRNA前駆体はキャップ修飾により安定化されている

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工学系研究科・工学部
2016/10/07

© 2016 Tsutomu Suzuki.5'リーダー配列を持つtRNA前駆体は既知のキャップ修飾に関わる酵素群(Ceg1, Cet1, Abd1, Tgs1, およびSwm2)によって5’末端にキャップ構造が付加され、5’エキソヌクレアーゼ(Rat1およびXrn1)による分解から保護される。付加されるキャップ構造(7-trimethylguanosine m7G)はオレンジ色の四角内に示す。

成熟過程のtRNA前駆体は5’キャップ修飾により5’エキソヌクレアーゼによる分解から保護されている。
5'リーダー配列を持つtRNA前駆体は既知のキャップ修飾に関わる酵素群(Ceg1, Cet1, Abd1, Tgs1, およびSwm2)によって5’末端にキャップ構造が付加され、5’エキソヌクレアーゼ(Rat1およびXrn1)による分解から保護される。付加されるキャップ構造(7-trimethylguanosine m7G)はオレンジ色の四角内に示す。
© 2016 Tsutomu Suzuki.

東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻の大平高之助教と鈴木勉教授らの研究グループは、未成熟な転移RNAがキャップ修飾されていることを発見し、これがtRNA成熟化をサポートしていることを示しました。本発見はこれまでに知られていたRNAのキャップ修飾の概念を覆すものであり、キャップ修飾が関与する新しい遺伝子の発現調節機構が存在する可能性を示唆するものです。

遺伝暗号の解読を司る転移RNA(tRNA)は、転写合成直後の前駆体に5’側と3’側の両末端にそれぞれ5’リーダー配列と3’トレーラー配列という数塩基程度の余分な配列があります。転写後にこれら配列が切除されると共に、tRNA上に多様な修飾が施されることで成熟し、本来の機能を発揮します。しかし、成熟過程のどのタイミングで修飾が導入されるか、またその順序については、不明な点が多く残されています。

研究グループは、同グループが開発したRNAの単離精製法と高感度質量分析法を用い、出芽酵母から取り出した様々なtRNA前駆体の修飾について詳細に解析しました。その結果、5’リーダー配列の切除が行われる前のtRNA前駆体の5’末端にメチルグアノシンキャップ構造が付加されていることを発見し、この現象をtRNA前駆体の5’キャップ修飾(pre-tRNA capping)と名付けました。一般にキャップ構造は特定のRNA合成酵素(RNAポリメラーゼII)による転写と同時に付加されることが知られています。しかし、tRNAはこの酵素とは別の合成酵素(RNAポリメラーゼIII)によって転写されて生成されるため、今回の発見はこれまでの分子生物学の常識を覆すものです。また興味深いことに、このキャップ構造の形成を妨げるとtRNA前駆体が顕著に減少することが判明しました。そこでtRNA成熟体を5’末端から分解することが知られている酵素(5’エキソヌクレアーゼ)の活性を阻害したところ、tRNA前駆体が増加しました。これらの結果から、このキャップ構造にはtRNA前駆体が分解されないように保護する役割があることが明らかとなりました。tRNAが成熟するためには、tRNA前駆体が細胞内をダイナミックに移動する必要があるため、キャップ構造は成熟過程のtRNA前駆体にとって盾のような役割があると示唆されます。

今回の成果はtRNA前駆体がキャップ修飾される現象を初めて捉えた報告であり、その機能の一端を明らかにしたものです。

「“tRNA前駆体がキャップ修飾されている!” 偶然の発見に始まった私たちの研究はとてもエキサイティングで改めて生命の複雑さと面白さに気付かされました」と大平助教は話します。「tRNA前駆体の5’キャップ修飾の役割の一端を示したに過ぎませんが、今後の研究によって、この現象がより詳細に理解され、その生物学的意義が明らかにされると信じています」と今後の展開に大きな期待を寄せています。

論文情報

Takayuki Ohira and Tsutomu Suzuki, "Precursors of tRNA are stabilized by methylguanosine cap structures", Nature Chemical Biology Online Edition: 2016/06/27 (Japan time), doi:10.1038/nchembio.2117.
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